12 少し戯れてから車の後部席に、千世が引っ付いたまま乗り込む。 「どんくらい?」 「30分くらいだろ」 ふむ、ゆったりしてよう。 着いた頃には文化祭が始まってる。開始は9時からだって、チケットに書いてあった。 横向きに千世に寄り掛かって好き勝手させながら、ぼんやりする。 くるくる俺の茶色い髪で遊んでる。 黒が混ざってきたから、そろそろ染めようかなあ。 「その髪と目で良いのか?」 「うん?」 あー、あぁ、そっか。 泉は千世も千鳥も見たことあるし飛鳥ちゃんも知ってるんだろうから、一般人の俺がこの二人と仲良くしてたら変に勘繰ると思ったのか。 「…ま、大丈夫っしょ」 「あ、そ」 気にしない気にしない。 気にしたら裏目に出ますよー、なんてね。 挙動不審とか、どんだけ恐れてんのよバレんのって感じですよ。バレても支障はないし面白いからいい。 「そこまで深く考えないよ」 「ふうん」 千鳥は幼なじみみたいな仲良しのオニイサンだし、千世はまあ従兄弟ってことにすれば問題なし。 仲良しオニイサンの従兄弟に懐かれるなんて、ない話でもない在り来りな状況でしょ。 あの家庭内にいた頃に出会ったから余計に仲良くなりました、なんて。嘘じゃないし。 「睦月、お茶のむ?」 「飲む飲むー」 「零すなよ」 「らじゃ」 さっきのコンビニ袋にはペットボトルのお茶とか、多分おつりで千世が好きなお菓子が入ってた。 最近のマイブームはグミらしい。堅めの。 千鳥から聞いた。 二年前は確か、チョロルチョコにハマってたような。十円ちょいだからね。 放置してたら凄い数買ってたけど。 千鳥がお小遣あげてたし、今はわかんないけど、自分の欲しいもの買えるようにって。 優しいよね、まじで。 千世は働けないからね、犬だから。 貰っても少し貯めるように大きいブタさん貯金箱あげたんだよなあ。 まだちゃんと貯めてるっぽい。 この間久しぶりに会った日、部屋に色違いのブタさんいたから。 千鳥が買ったのか、自分で買ったのかはさておき。貯金はなんかあった時の為に、ね。 [*][#] [戻る] |