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エレベーターに乗って、ふんふん鼻歌なんてしちゃって。
パーカーのポケットに両手突っ込んで階が変わるのを見てる。人間のクセって面白いよね、本当。
一階に着いて見慣れたエントランスに出れば、真っ直ぐ出入口まで延びる道の先に黒い車が一台。
車の反対側、多分運転席側の方から後ろ姿がひとつ。
赤茶色の髪を風に靡かせて、後ろ姿からでも雰囲気があるよ。
犬の姿が見えないから隣でおすわりしてるかコンビニ行かされたな。
「おまたせ、ダーリン!」
「さっき着いたとこだハニー」
紳士だ。
そのラフな私服姿もカッコイイね。
缶コーヒー片手に車に寄り掛かってたらしく、身体を離して近付いて来る。
どっかのスタイリストが用意したんじゃないかってくらいの服装センスだけど、まじで私服だからセンス良すぎ。
自分を分かってるよね。
「あれ、千世は?」
「コンビニ」
確かに隣かコンビニだとは思ったけど、まさか後者だとは。
まあ、いつも気配に気付いて真っ先に突っ込んで来るから、それがないってことはいないんですよね。
千鳥の顔を見上げてたら、バタバタと足音が聞こえてきた。
ぴくりと千鳥の顔が反応した気がしたけど、
「睦月!」
「っぐふ、」
横からどーん!みたいな。
倒れそうになったけど、踏ん張ったよ俺。頑張った…!
ちらと見れば、コンビニ袋を腕にぶら下げた千世がぎゅうぎゅう抱き着いてて。
ぶつかった時はちょっとイラッとしたけど、まあ、仕方ない。
サラサラの銀髪を撫でながら、とりあえず抱き着かれたままにしとく。てか、そのコンビニ袋ってさ。
「ここのコンビニって結構距離なかった?」
「行かせた」
「えー…」
それでダッシュして息切れしてないこいつってナニモノ?犬だけど。
千世の服は千鳥が買い与えてくれたものだから、抜群にセンスが良い。カッコイイし可愛い。
場違いなのは俺ですね、はい。
一応背はギリ170だから!ちっさいとか言わない!
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