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01
 



 店のドアに掛けてある、木で出来た札を裏返す。最近付けました。

 『Close』から『Open』へ。
 今日も『R』はいつも通り開店です。
 とりあえずプロレスごっこは延期になったようです。


 ある程度の下拵えをしながら、お客さんの来店を待ってるのが通常。
 だって暇だし。


  - ちりん



「いらっしゃいませー」
「いらっしゃ、い、」



 暇を持て余してたら、鈴の音がして来客を知らせる。
 珍しく開店すぐにお客さんだ、とか思ってカウンターからそちらを見れば。
 千春先輩は奥の方でなんかしてるから普通だけど、俺は固まったよ。



「よ、久しぶりやな睦月」
「……えー…」



 なんで来てんの、飛鳥ちゃん。



「そないな目ぇせんといて」
「……」



 あの拉致事件の犯人、三人のうちの一人である関西弁の飛鳥ちゃんがご来店でーす。
 相変わらずの金髪ですね。
 染めてるんだと思うけど、頻繁に染めてんのか黒髪が見えない。
 にこにこしながらカウンターに座る飛鳥ちゃん。



「……お前、」
「どーも」
「帰れ」



 奥の方から戻ってきた千春先輩が、飛鳥ちゃんを見てぴたりと足を止めて一言。
 視線が鋭いよ。
 話は聞いてるはずだし、顔を知ってるか分からなかったけど今の反応で知ってるとみた。
 なんで知ってんのかは聞かないでおこう。うん。



「そない睨みなさんな。何もせぇへんて」
「どうだか」
「ありゃま、信用皆無やね」
「当たり前だろ」



 千春先輩、素が丸出し。
 まあ、あの時に話聞いただけでどす黒い何かが渦巻いてたけども。

 何かすんじゃね?とか思ったけど、どうやら手を出してはいないらしい。
 馬鹿じゃないから当然っちゃ当然か。
 ところで。



「何しにきたのさ」
「おん?そりゃあもちろん睦月に会いに」
「帰れ、今すぐ」



 …最後まで言わせてあげようぜ、先輩。
 キメ顔な飛鳥ちゃんに恥をかかせよう、みたいな感じか。
 キメ顔されても靡かないけども。



「…ほなとりあえず、珈琲とサンドイッチ下さいな」
「はーい」



 注文したからにはお客さんだから千春先輩も黙って、でも不機嫌。
 用がないなら食って帰れって感じですねわかります。


 


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あきゅろす。
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