01
ダンディーな警察官は清水で、若い警察官は山田というらしい。
未だに硬直してるよあの人。
身に起きた事態を理解出来てないらしい。ぶち当たった事がないんだろうか。
とにかく、清水さんが言うには詳しい現場検証の為にしばらく警察署にお世話になるらしい。
仕事には行けないみたいで、明日シフト入ってたよなあ、なんて思った。
店長に電話せねば。
貴重品と着替えだけ持ってくれば、あとの私物はまとめて送ってくれると言われて頷いた。
向こうに行くのにスエットじゃなあ、と思い私服に着替えるのと荷物を取りに部屋に戻る。
俺のバイト先は、店長が自営業で開店させたらしい喫茶店である。
いろいろとアレな従業員が働いている。もちろん店長もアレだけど。誰彼歪んでいるもんだ。
どうやって見つけてなんで受かったのかは覚えてないけれど、店長は人を見る目があるから、なんて言った怖面の美男を思い出す。
確かに無駄に聡い人だとは思う。一生、どうやっても敵わない。
気怠そうな態度、適当な発言、けれど雰囲気は自分を強く持っていて、俺様で自分勝手だけどやることはやるから信用も厚い。
自分を含めて五人の従業員。俺はあの場所の雰囲気が好きだ。
ただまあ、あの人の家に勝る雰囲気はないけれど。それでも今は、頼れない。
話逸れた。
とにかく店長に電話だ。
着替えも少ない荷造りも終え、携帯を操作しながら居間に戻る。履歴から番号をプッシュ。
確か今は夜8時前でまだ店にいるはずだ。開店が9時で閉店が7時の閉まるのが早い喫茶店。
目立つような場所ではない為お客さんはあんまり来ないけれど、店長が決めた時間はあの人らしいなと思った。
もうすぐ二年になる。まだ一年半くらいだけど。なんて思っていた時に、ぷつりと音がした。
『どうした?』
一言目がそれとか。
いつもだけど、あんまり電話かけないからかなと勝手に納得している。
「お疲れ様です。突然すみません、明日仕事行けなくなりまして、」
『は?…理由』
「えと、」
ですよね。
どう説明しようかと考えながら清水さんに視線を向けると、清水さんは代わってくれるか、と言った。
ちょっと代わります、と言ってから清水さんに携帯を渡す。彼は挨拶をした後、わかりやすく綺麗に話をまとめてくれた。
話を終えた清水さんが携帯を渡してくれる。
「……もしもし、」
『…、あァ、理由は分かった。めんどくせェだろうが、シフト入れ替えておくからちゃんと連絡寄越せよ』
言葉は荒いが、声は優しい。
その優しさに心が温まるのを感じながら、もう一度謝罪をして電話を切った。
「ありがとうございます」
「いや、いいんだ。分かってもらえて良かったよ」
清水さんに軽く頭を下げる。
優しいし頼りになる人だなあ、と思う。
未だに無言な新人山田くんは見ない。もうスルーだ。
署に戻ろうと清水さんが言い、いつでも出られるようにする。
清水さんは山田くんの肩を揺らし、意識を戻してやる。
状況把握が追いつかないのか、わたわたとし始めた山田くんに呆れながら状況を伝えている。
それから、現場を検視官に任せた清水さんの後ろについていく。
生まれて始めてパトカーに乗って、生まれ初めて警察署に入ったな。
初めてなほうがいいんだろうけど。
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