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09
 



 ざわめく店内に設置されているカウンター席。
 この『tutelary』の溜まり場を建てた初代総長である天王焔紀は、カウンターの内側に立ち目の前の席でうなだれている後輩を見つつ、その視界では出入口をとらえている。


 ───そろそろ、だろうか。


 焔紀はこの後の店内の様子を予想して口端を上げる。
 【黒猫】がこの店に姿を最後に見せたのは、約二年前である。
 多少面子は変わっているが、幹部などの上層部にいる人間は変わりなくそこにいる。

 噂として、そして伝説として語られる【黒猫】の存在を信じている人間もいれば、たかが噂、伝説だと思い半信半疑の人間もいる。
 姿を見る事はあっても、チームに属する殆どの人間は【黒猫】の本名すらも知らないのだから。











 ざわめきが外まで聞こえるとか、どんだけ人数いんの。
 それか騒ぎすぎとか?元気だね。
 ゆっくりと扉を開ければ、それに気付いた人間がこちらに視線を向け、そして口端を上げた。

 見てよあの悪戯っ子みたいな笑い。
 【白虎】め、絶対あん時の事思い出して笑ってやがる。


 気付いたのは【四神】で、もちろん焔紀は気付いてる。【白虎】が気付いたから、顔は向けなくても察してるし視界に入れたんだろうな。
 カウンターでうなだれてる人間を除いては。


 視線を気にする事なくカウンターの一番奥、出入口のすぐ近くの左側に一つ間を空けて腰掛ける。
 コツ、と音がして視線を上げれば色気たっぷりの美男が一人。



「よう、来たか」
「…仕方なく、ね」
「ハッ、言うねえ」



 【黒猫】の時はそれなりに雰囲気作ってるから、あんまり喋る気がしない。
 見た目、格好、気分、テンションが変われば雰囲気も変わる。


 いつの間にか店内からざわめきが消えてた。
 え、何なに。

 目の前の美形、初代総長こと天王焔紀から目を反らして周りを見れば、この場にいる全員の視線が俺に向けられてるっぽい。


 やだ、俺人気者?
 なんつって。
 そりゃびっくりするでしょ、見慣れない怪しい人間が初代総長と仲よさ気に話してりゃ。
 仲良いからさ。


 


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あきゅろす。
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