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03
 



 顔をゆるゆるにしながら、皿を持ち上げて全体を見る仁科くん。

 これは仁科くんのクセみたいなものらしくて、よくやるみたい。
 最初はびっくりしたけどね。
 作った側としたら嬉しい。


 よくあるドーム型のモンブラン。
 てっぺんに甘栗が乗ってる、どこにでもあるような外見。

 薄茶のマロンクリームと中には生クリームにカスタード、台はシンプルなスポンジでクリームの間には砕いた甘栗。
 カスタードや生クリームが甘めだから、マロンクリームは甘さ控えめの栗本来の味にしてみました。
 シンプルだけど、色々細かいから良い暇潰しにはなる。

 ゆっくりと皿を置いて、脇にあるフォークを持って手を合わせる姿を見る。
 なんだろう、この感じ。
 弟に欲しいこの感じ。



「いただきます!」
「ハイどーぞ」



 良い声でいただきますをした後、仁科くんはゆっくりフォークをケーキに差し込んでいく。
 その仕草を見ながら少し笑った。



「……む、」



 ケーキを口に含んで、数回咀嚼した仁科くんは見事に固まった。
 どうしたどうした。
 一挙一動が超面白いんだけど。



「…ぅんまあ……やっぱここのケーキが1番うまいぃぃぃ」
「……ふは、大袈裟」



 フォークを持ってない手を握って目を閉じて、なんて大袈裟な動きしなくても。

 もっと美味いケーキなんて沢山あるのに、仁科くんはここの店の従業員が作るケーキが1番好きだって言ってくれる。

 千春先輩や朔也先輩に泉の作ったスイーツも食べたことがある、かなりレアな体験をしてるからねこの子。


 素直で純粋だけどしっかりしてる仁科くんは見事に餌付けされてるし、みんな好いてるから良い関係だよね。

 いつも出されたケーキとか和菓子を、ゆっくり味わって食べてる姿を見るのは可愛いし嬉しいよ、本当に。

 作り甲斐があるんだよね。
 綺麗に完食してくれると、本当に好きなんだなって思う。



「ごちそうさまでした!…あー幸せ」
「大袈裟だって」
「マジですから、この幸せは!」



 そんな真剣に言わなくても伝わるって。



「てか、今日は一人なんすか?」
「いんやー、毎度の如く、店長は2階。今日は朔也先輩が一緒だけど出ちゃってるから」
「へぇ、いつも居るのに居ないっすよねー」
「ねー、神出鬼没もどき」



 笑いながら話すのは好き。
 他愛ない会話はたまにはいいよ、うん。仁科くんは裏がないからなあ、直感男っぽい。


 


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あきゅろす。
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