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俺にちゃんとお説教出来るのは千春先輩だけらしいけど、確かに納得。もうずっと正座だよ、ずぅぅっと。
雰囲気がお説教な感じだと、すぱっと正座しちゃうもん俺。まじで。
嬉しいけどお説教は嫌い。うわー、うわー、帰りたくない。家に帰りたくない気持ちを思い出した。
いや、状況も気持ちも違うけど、帰りたくないって気持ちになる。
帰るけどね。普通に帰りますけどね。
「うん、暇だね」
「は?…お前、自分が餌にされてる自覚ある?」
「ありますとも、失礼な」
「んな事言うとりますけど、自由やね」
「え、本当のことだし」
自分の感情には素直なの!
自分の都合の良い時だけいい子になっちゃったりするんだけどね、まあご愛嬌ってことで。
すんごい暇。退屈は人を殺せるんだよ?
あー、早く来ないかな、誰か。
「俺はここだよー!」
「バカ」
「そんで分かったら凄過ぎやろ」
うん、まあ、確かにね。
泉は【狂犬】とか駄犬とか、犬扱いされてるけど人間だしね。
ただちょっと運動能力が人並みを超越えしてるけど。
あれ、それじゃ普通じゃないか。うん?どっちだ?まあいっか、めんど。
───俺は知らなかった。知るわけがない。
偶然この部屋の前を通り過ぎた誰かが、偶然隣の部屋に入って行って。
偶然、俺の声を聞いて、面白そうに口端を上げたなんて。
知ってたら凄いから。どんだけ最強設定なんですか。
「んー、ねむ」
「ムカつくなお前」
そう睨みなさんな、翼ちゃん。
だってお腹いっぱいになったら眠くなるんだよ。俺だけ?
うとうとしつつソファーの背もたれにだらりと寄り掛かって目を閉じた、のもつかの間、ふと一枚壁を隔てたような声が耳に入った。
───…迷子の迷子の黒猫チャンー、あなたの居場所はどこですかー?
「…ふぶっ!」
「あ?」
「なんや、どないしたん」
いきなり吹き出した俺に首を傾げてる二人。
ああ、昴くんもさりげなく首傾げてるわ。みんなには聞こえなかったらしい。
え…怪奇現象?幻聴?
じゃなくて。
どうしてくれんだコノヤロー思わず吹き出しちゃったじゃん。
黒猫じゃなくて子猫だろ、そこは。てか疑問形かよ。原曲だと疑問してないよね?伸ばしてるだけだよね?
声の聞こえた方を見れば、ベランダに続く窓がある。
え?ベランダ?ってことは、隣?
誰。誰々、だれ。気に、なる…!
ふざけた歌は聞こえず、俺はじっとベランダを見る。
当たり前だけど人影はない。
わからない。どうしよう、どうしてくれんだまじで。
超テンション上がる。
「何なんだよ急に、変なやつだな」
「思い出し笑いでもしたんか?」
「いや、気にしないでクダサイ」
とりあえず腹ごしらえは済んで、手足は自由のまま。
携帯は未だテーブルの上。
鞄は知らん。どっかそこらへん。
テーブルを挟んで三人がいる。
あの歌を歌った声に聞き覚えがあるけど、確信はない。声変えてたら間違えるし。
ぴたりと静かになって、また雑談をはじめた二人を見てたら。
- ピンポーン。
必然的とでも言うように、来訪者を知らせるチャイムが鳴った。
さあ、誰だ。
めちゃくちゃウキウキしてるよ今、俺。
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