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べつにイイ笑顔に靡いたわけじゃないよ!
名乗られたら名乗るのが常識でしょ、嘘言ってもさ。
どうでもいいんだけどね。
「ところで飛鳥ちゃん」
「なんや睦月ちゃん」
うん、この人もノリ良いね。
そんなノリの良さは焔紀だけで充分です!なんつって。
「なんで俺?」
なんとなく拉致した理由を聞いたら、ほんのすこし、本当に一瞬変化があった。
特に反応はしません。はい、スルースルー。
「…バイト先の後輩を、そらぁもう可愛いがっとるっちゅう話を聞いたんよ。一匹狼なアレが、もうめちゃ大事ぃにしとるんやって」
「───…、ふうん」
「んで、色々調べとった時に睦月が出て来たっちゅうわけ」
「で、拉致、と」
「ごめんなぁ」
ホントに悪いと思ってるらしく、苦笑いされちゃいました。
そんな単純な理由でいいのか。
ただの世話好きってことは考えなかったのかな。ていうか、
「調べた時点で名前知ったでしょ」
「いや、つい」
偽名使うたら分かるから、なんてぺろっと舌出して言いやがったよこの人。
そんな可愛い仕草しても靡きません!
まあ、【狂犬】は一匹狼とか言われつつチームに入っててしかも心配性だし。
関わりが夜の世界だけじゃないってことは、性格もそれなりに知ってるんだろうな。
学校関係かな。
意外とちゃんと学校行ってるし、なんか一年生の時から成績良いらしいから。
凄いよね、不良なのに。勉強してる姿とか想像出来ない。
てことはアイツ俺より頭良いってこと?
え、…えー。なんかショック。
「───…睦月?聞いとる?」
「いえす!」
「…聞いとらんかったな」
はい、すんません聞いてませんでした。
ってことで、わんもあ。
「……学校の後輩なんよ、アイツ」
「ふへ?」
「【狂犬】…、いや、泉やな」
うはー。
聞かずとも喋ってくれちゃったよ。
エスパー?次からエスパー飛鳥ちゃんでいい?我ながらセンス悪いよね。
「…後輩に負けたんだ」
「ちょ、それ言うたらあかんて、」
「え、違うの?」
「いや……」
違わんけど、なんて呟いて綺麗な金色の髪を巻き込んで後頭部を掻き混ぜる飛鳥ちゃん。
痛んでそうなのに。痛んでそうなのにサラッサラなんだけど。
「夜の世界なん、学生関係あらへん」
「……ふうん、」
一応知らないフリ。知ってるけどね。
色々知っちゃってるけどね。
何を、なんて聞かないで。俺は一般人なんで。
「ま、負けた後に知ったんやけど」
なんちゅー無関心。
いっこ下なだけじゃん。知っとこうぜ、先輩として。
有名な後輩は把握するもんじゃね?情報回ってこね?まあいっか。
「───オイ、なに普通に会話してんだ」
「おかえりー」
「あ、おかえりなさーい」
「……お前ら…」
いつの間にか翼ちゃん帰宅。
あれ、ここって三人のうち誰かの家なのか?どうでもいいか。
おーなーかーすーいーたー。
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