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 八百屋さんでカットフルーツのメロンとパイナップルを買って、隅っこで食べながら次は何にしようかなと視界に入る店を眺めた。

 昼間っから追いかけっこしてるってことは、休日なわけでもないし学校サボってるのか学生じゃないのか。
 鬼ごっこが本格化するのは夜中だろうなあ。

 残念ながらバイトがあるから夜中出られないし、帰り道に遭遇しても見送るくらい。
 あの集会でどちらが【黒猫】かは大体広まっただろうし、今さらチームメンバーが【白猫】側を本物だとは思ってない、はず。

 あとは本人がどうするかだよなあ。
 【黒猫】と言い張るのか諦めるのか、はたまた逃げ切るのか。
 まあ、一度捕まえるって決まった時点でどこ行っても無駄なんだけど。



「千世なに食べたい?」
「コロッケ」



 昔ながらのポテトコロッケって甘くて美味しいよねー。
 目の前にあった揚げ物屋に寄って、ひとつ30円とかいう破格のポテトコロッケとカボチャコロッケも買った。
 揚げたて熱々で、さっき果物食べたし胃もたれはしないだろうと半分こした。



 そこからは弁当屋のお握りとかパン屋のサンドイッチ、アイスにクレープと目についた食べ物を千世が欲しがって、ひとつ買っては少し貰ったりして。

 たまの食べ歩きも悪くない、なんて思いながら楽しそうな千世を眺めた。





「───…もー帰ろっか」
「睦月つかれた?」
「ちょっとね」



 商店街は平日の昼間でも人が多い。
 外にあるとはいえ、中々に長く居るのはしんどかった。

 目的は達成したので、あとは帰ってのんびりしよう、と千世の口元についたクリームを指で掬った。
 口にクリームとかお茶目か。
 可愛いから許されるんだよなあ。



「だいじょうぶ?だっこする?」
「目立つからしなくていい」



 周りが見えてない、というよりは周りに興味がない、そもそも眼中にないからなんだろうけど。
 それをここで言っちゃいかんよ。
 クレープを買いに来て並んでたカップルの彼氏が吹き出したぞ。
 聞こえてたんすね。
 うちの愛犬がすんませんね。


 クレープを食べ終えた千世が包みをゴミ箱に入れて、それを見ながら立ち上がった。

 帰り道に駄菓子屋に行って、懐かしいものや新しいものを物色しながら幾つか買って、後で一緒に食べようねと言って笑うひたすらに可愛い愛犬に癒された。



 


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