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 マンションから夜道を歩いてしばらく、バイクが沢山停まっているお店が見えてきて、入ったらどんなリアクションをするのか少しだけ楽しみになった。

 店に入るちょっと前、千鳥に「そういえばね」と意味深げに言葉を途切れさせると、千鳥は振り返ってこちらを見た。



「噂の【黒猫】とは別に、もう一人【黒猫】が居るって話が出てるらしいよ」
「……、」



 軽くフードを上げて前を見ると、目を細めた千鳥がいて。
 唐突に鼻を摘ままれた。



「ふぐっ」
「何かやってんじゃねーか」



 速攻でやらかしがバレた。
 いや焔紀も察してそうだけどね。

 返信には『【黒猫】が二人居るらしいな?』と意味ありげな文だけがあって、明らかに「お前ちょっかい掛けただろ」という含みが読み取れた。


 今日の集会でどう説明するのかは千鳥に任せるけど、出席したメンバーはこっちの【黒猫】が【黒猫】であると分かるだろうな。


 ややこしいなぁ、なんて考えながら店の扉を開いた瞬間、視界にピンクが映った。




「───…くっろねっこちゃーん!」
「ぶふ…っ」



 頭をまるごと包まれて胸板に押し付けられ、甘ったるい香りが鼻をついた。
 後ろで千世が「ピンクはなれて!」と必死こいてるのが聞こえるが、俺が嫌がってないから無理矢理引き離そうとはしてない。

 いや結構いつもがっつり引き剥がしに来るんだけど。



「ねーぇ、今度はどんな遊び?」
「なんのこと?」
「どっちがホンモノー、なんて、見りゃ分かるのにねぇ」



 周りには聞こえない声量で愉快そうに言った慧に笑みが浮かぶ。
 親しみ慣れてるお前らはそりゃあすぐに分かるだろうけど、そうじゃない奴等は混乱するんだよね。
 顔すら見たことない、大体の身長と声と仕草と周囲の態度くらいしか認識出来ないんだから、外に出ちゃったらねえ。



「すぐ終わるよ」
「どうするか決まったのー?」



 とりあえず離せ、と頭を動かしたら慧はあっさり離れて、一緒にカウンターの端に行くと奥のソファ側から熱烈な視線を向けられてた。

 どれもこれも喫驚。
 普段この店に来ない傘下チームの上層部も居るし、以前より人が多い。
 まあ、【黒猫】復帰説に関連してるんだろうけど。

 集会なら会えると思ったのかな。
 それか【黒猫】が来るよー、なんて焔紀が言ったか。



 


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あきゅろす。
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