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携帯は枕の隣に置いていたからうるさくはないけど、振動が伝わってくる。
しかし動けない。
俺は今、千鳥の抱き枕である。質の悪い抱き枕である。
というわけで。
「ちせー、携帯とってー」
「……わん」
ちょうど千世の頭上に携帯があるので、うるさくないように小声で言ったら腰周りに絡み付いていた腕が動いた。
千世が俺の声に反応しないわけがない。
律儀に返事をした千世がピンポイントで携帯を掴んだようで、振動音が籠る。
着信はメールだったみたいで、俺の携帯を差し出した千世は再び腕を腰に巻き付けて寝る体勢に戻った。
その頭を軽く撫でてから携帯を開きメールを確認すると、送信者は焔紀だった。
「……ふーむ…」
絵文字も顔文字もない文だけの短い内容は、簡潔に「今日集会あるけどお前どうすんの」と書いてある。
昨日言えや、と思ったのは仕方ない。
まあ今はもう総長じゃないし、総長は千鳥だし、そんなにがっつりチームの世話をしてるわけじゃない。
一応集会の場所が焔紀の店だったりするし、まあそんなん関係なく単純に私情でどうするか聞いてるんだろうけども。
集会の内容に偽物の件は入るんだろうなぁ、なんて思いながらカチカチとゆっくりボタンを押していく。
明日もこっちにいるつもりだから、千鳥について行く感じかなあ。
そんな事を文にして送り返した。
つか千鳥さん何も言わなかったけど、言わずとも居るなら連れていく気なんですかね。
そうなっても俺は素直に連れていかれるだけだから何も困らないんだけど。
遅かれ早かれ噂の件をどうするか聞くつもりではあっただろうし、俺が昨日その偽物と遭遇しなかったら集会の時に聞いてたんかなあ。
どちらにしろ正体くらいは知りたい的な事は言うだろうから、その決定が一日程度早まったくらいだ。
なんにせよ千鳥も焔紀もすぐに捕まえる気はないみたい。
被害に遭った人達に申し訳ないとは思ってないけども。
たぶん単純に二人は、その程度の輩に負けてんじゃねぇよって意味を込めて放置してる、なんて……あり得るな。
情報は入ってるはずなのに、幹部も特に言及してないみたいだし。
噂の【黒猫】は直接喧嘩しているわけじゃないらしいから、取り巻きはそれなりに強い人を付けたのか、ただ被害に遭ったヤツが軒並み弱かったのかは定かじゃない。
すぐに焔紀からの返信が来て、メールを開いて目を通しながら無意識に口の端が吊り上がった。
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