09
目が覚めたのはギリギリ午前中の陽射しが暖かい頃。
今日は千鳥の仕事がお休みなので、起きても両側からサンドイッチされたままでした。
しかも寝る前より密着してる。
「……あったか」
布団と人肌の温もりって、何でこんなに気持ち良いんだろう。
背後の犬が腰周りに絡み付き、正面では睡眠中ですらも色気を撒き散らす美男が腕枕におでこくっ付けて来てる。
なにこれ両側がひたすらに可愛い。
寝覚め良すぎて二度寝する気よりも目の前の美男を観察してたい。
そんな欲に従って、瞼を閉じている千鳥をじっくり観察した。
……なんか、なんだろ、前より色気増してない?気のせい?
「………、」
「あ」
視線が刺激になってしまったのか、ゆっくりと瞼が上がって目が合う。
おでこくっついてるからぼやけてるけど、なんとなく千鳥の寝起きは幼さがある。
「……おはよ?」
「ん、」
腕枕をしていた腕が俺の頭を千鳥の首筋に持っていく。
髪を軽く弄られて、甘ったるい空気の中で幸福感を味わっていると、急に耳を食われた。
「う、ひゃ…っ、」
「………」
なぜ寝起きに耳を食らう。
ぞわっとした。
しかもまだ目が覚めてないみたいで無言のまま、行動だけが甘えたになっている千鳥。
良い歳して、なんて思うかもしれないが千鳥がやると可愛いだけだし破壊力抜群だし、つか首筋撫でんな。
「ちーどりー、寝惚けてるー…」
「……、あー…」
寝起きの掠れた声がダイレクトに耳元で聞こえたせいで腰が死にそうになった。
とりあえず千鳥は起きたけど、腰周りに絡まる犬はいまだに爆睡中である。
つっても声かければすぐ起きるんだけど。
「まだ寝てる?」
「……もうちょっと」
かーわーいーい。
年上の男に言う言葉じゃないんだけど、とにかく可愛い。言い方が可愛い。
こんなん許すに決まってんじゃん。
許さないヤツいる?
くっつきながら「もうちょっと」って甘えた声で言うんだよ?
許すでしょ。
え、俺だけ?
日頃忙しくしててゆっくり休める時間が出来たんだから、休ませたい気持ちも確かにあるわけで。
完全に俺を抱き枕にした千鳥の髪を指で弄りながら、ふわふわした幸せを噛み締めていると、背後で携帯が振動した。
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