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金髪がボタンを押して携帯を耳に当てる。
ニヤリと上がる口元を隠しもしない。
楽しそうな顔してますな。
そんな悪戯っ子な笑みに女性は頬を染めちゃうよ、アスカちゃん。美形はなんでも絵になりますね。
「おはようさん、お兄チャン。今日はお仕事やったんすなぁ」
少しの沈黙の後、金髪が愉快そうに喋り出した。
タイミング良いってことは、とりあえず思った人で間違いはないってことかな。
「あんれ、忘れちゃったんちゃう？己が潰した奴のこ、と！」
「……遊ぶなよ」
うんうん、遊んでるね。すっごい楽しそうだもんね。
お兄さん達はその人に潰されたんだねー。復讐みたいな？
単純だよね、方法が。
もっと、複雑なものかと思ったけど違うみたい。つーまーんーなーいーのー。
まあ、負け知らずの【狂犬】だからこそ、負けた腹いせかどうかは知らないけど恨みは持たれてるはずだよね。
つい先日も思ってたけど、学校だとどうなんだろ。
むさ苦しい男子校だって言ってたけど、憧れとか好意だけなじゃないはず。
かっこよくて、それなりに頭もよくて、運動神経も人並み以上、喧嘩も強い。嫉妬しない人間がいないわけないよねー。
うわ、やっぱり見たい。
めちゃくちゃ見たい。
すんごい楽しそう。
高校生がどんな行動を取るのか、気になる。
単独なのか、集団なのか。
陰口や影ながら嫌がらせか、はたまた呼び出しか。嫉妬の矛先は本人か別の人間か。
学校に通いたくはないけど、暇つぶしにはなりそうだなーとは思う。
楽しいと思うのは仕方ないじゃないか。楽しいんだから。価値観の違いってやつだよ。
俺は幼い頃から、人間関係の亀裂や歪みに心踊らせることがある。
例えるなら、クラス内のいじめだとか近所に起きた殺人事件などの醜いものがすごく楽しく思えた。
今でもなんて言ったらいいかわからない軽い趣味ではある。
人と人との醜さに面白可笑しくなる気持ち。
眺めてるだけならまだしも、気に入らないと相手を叩き潰したくなる気持ち。
俺は異常ではないのか、なんて、最初は思ったけど。
蓮さんはそれすらも含めて、これが俺の普通なら気にする事じゃないって言って何かをされる事もなく、変わらずこんな最低な人間なんだけど。
「───おい、」
「……」
「おい！」
「───…うぁい！」
「……」
ちょ、変な声出ちゃったじゃん！
仕方ないでしょ、だからそんな変な奴見るような目で見ないで！
「…なにか？」
聞いたら、溜息が返ってきた。
失礼な奴だ。そっちから話かけたくせにさ！ふんだ！
じゃなくて。
横になってんの疲れたな。座りたいなー。
「起こしてください！」
「却下」
「断る！」
「ざけんな」
「えー…ひーどーい」
「…うぜぇ」
ツバサちゃん酷い！なんて言ったら睨まれちゃいました。
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