04
俺は今18歳だ。
学校は行ってないが、小さな喫茶店でバイトしている。
けれど生活するにあたり光熱費とか家賃とかいろいろな支払い、食費などの金銭的条件を満たすほどの稼ぎではない。
どれだけの支払いがあるのかも分からない。
俺は追い詰められていたのだろうか。
たかだか18歳の子供でも大人でもない年齢の人間が突然親権者を失って、はいどうぞと一人暮らしなんて出来るわけがない。
まずこの部屋でまた生活しようとも思わない。この切り付けた腕の痛みも、一時の安定剤のようなものだった。少しだけ違うけど。
親権者が死んでも、悲しくはない。
むしろ興味がないのかもしれない。
外面が良いだけで常識の欠如した長男。
長男だけを甘やかしている父親。
日々の苛立ち、ストレス。冷めていく心。
本来落ち着ける場所であるはずの家ですら、丸ごとストレスの塊で。ストレスの渦の中に身を突っ込んでいるような感覚だ。
治まる事のない苛立ち。
不眠症になり、過食になったり拒食になったりで常に胃が痛み、何かを食べれば痛みは増し頭痛はおさまらず。
やっと眠りに入れても苛立ったまま、目覚めても苛立ち。落ち着きたくて、殺してやりたい衝動が何度も襲った。
その度に暴食を繰り返し、薬を多量に飲んで胃に負担をかけて。
切っている場所が埋まるほどに左腕だけを切りつづけて、心臓に負担をかける。
死にたいわけではないから、ただ落ち着きたくて繰り返す。どれ程負担をかけたら、自分がどうなるのかには興味があったから。
俺が現在唯一落ち着ける居場所は、職場だけだ。
「───っなにを言い出すんだ!君は、まだ先があるのに、」
突然の大きな声に意識が戻る。
どうやら飛んでいたらしい。
目の前で顔を歪めている若い警察官。
ダンディーな警察官は、始まったとばかりに呆れた溜め息を吐いている。
若い警察官の言葉に感情が無くなっていくのを感じながら、彼を見る。
目を合わせた途端、彼はびくりと肩を揺らし戸惑いを見せた。
挙動不審だなオイ。
そんな冷たい表情なのか。なんて思いながら、口を開いた。
「じゃあ、」
ぴたりと止め、息を飲んだ彼を見据える。テレビはうるさいほど笑っている。
「貴方が、何かしてくれるんですか?」
「っ、え、」
戸惑う声。挙動不審に揺れる瞳。
ダンディーな警察官は、ただ何も言わずに見ている。
何か、助けてくれるのだろうか。
生活の保証を、身の保証を、あんたの力量で、その正義感で。人ひとりの人生を。
若いのだから。先があるのだから。
そんな綺麗事など、虫酸が走る吐き気がする。若いからと言って先があるとは限らないのに。
まあ、こんな正義感だけが先走るような人間にはそれを綺麗事とすら思わないのかもしれないけれど。
こんな時代には、歪みのない人間の方が少ないというのに。
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