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07
 



 もしかして一日に色々なところを回っているのかも。
 随分と拡散行動に熱心だこと。



「そう、その偽物の【黒猫】ね。聞いたのさっきなんだけど」
「で?」
「こっち来る途中に会ったよ」
「は?」



 あっさり言ったからか、こちらを見た千鳥が珍しく驚いててがっつり観察してしまった。
 撫でていた手も止まったけど、それは一瞬で復活した。



「どこで会った?」
「大通りの一本手前の空き地で奇襲かけてた」
「顔は?」
「暗くて見えなかった。しゃべり方似せてたから会ったことあると思うよ」
「ふうん…」



 毛束を指先でくるくるさせる千鳥は、何やら考えてるようで。
 怒っているようには見えないけど雰囲気は少し鋭い。
 さっきまで甘ったるくてふわふわで綿あめみたいだったのに。



「お前なんかしたか?」
「背中向けてた被害側の背後で話聞いてた。【黒猫】って言ってたし、手ぇ出したらチームが黙ってないぞーとか言ってた」
「……ハッ」



 今明らかに馬鹿にしたな。

 【黒猫】と俺に面識のある連中なら誰でもそうなりそうだけど。
 【黒猫】は『tutelary』の上層部に媚びてるわけでもないし、少しの仲間意識があってもそれは一部。
 仲間っていうか個人的に仲良しだから、出会いはチームでも今は関係なく私情の関わりの方がしっくりくる。


 自由気ままに犬を連れてふらっと現れ、ふらっと消えていく。
 ただまあ、他所からみたら媚びてるように見えるのかもしれない。
 何せ上層部が基本的に俺に甘いのだから。

 一部だけ見ていれば、その認識は媚びて気に入られた正体不明の不審者程度。



「お前が何かするなら手ぇ貸すが?」
「うーん…、目的よりとりあえず誰がやってんのか知りたいかな」



 いつまで続くかは知らないけど、このまま野放しにしてたら怪我人増やすだけだし、【黒猫】のいる『tutelary』にまで悪い噂がついたら嫌だ。
 焔紀が作って、総長辞めてもずっと大事にしてるチームだ。溜まり場専用に店を建てるくらいに。

 大事な人が作って大事な人が総長をやってる、そんなチームに不要な傷をつけるのは頂けない。
 傘下も含め、チームに居る不良達や特に上層部は『tutelary』が好きなのだから。



 そう言ったら、理由に焔紀が居る事は嫌そうだったけど優しく笑って頭を撫でられた。



 


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あきゅろす。
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