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05
 


「───むっつきぃいぃぃ!」
「……っぶね!」



 玄関を開けた瞬間に待ってましたとばかりに飛び出してきた大型犬は、俺を押し倒す勢いで抱きついてきた。
 さすがに危なすぎたからぶん殴った。



「いきなり飛び込むんじゃない!」
「……ごめんなさい」



 お座りした犬の垂れた尻尾と耳が見える気がしなくもないが、ぶっちゃけ可愛いけど危ない事に変わりはない。
 勢いで頭ぶつけたらどうすんだ。

 靴も脱がずに玄関で犬にお説教していたら、リビングから千鳥が怠そうに出てきた。



「……なにしてんだ」
「ドア開けたら出てきたからお説教。びっくり箱より危ないわ」
「へえ。つか遅かったな」



 千世の飛び込みはここに住んでいた時には日常茶飯事だったからか、千鳥は特に興味はないらしい。
 室内に上がりながら寄り道してた、と返して千世の頭を軽く叩く。



「行くよ」
「っわん!」



 しゅたっと立ち上がった千世は磁石みたいに背中に張り付いて、歩きづらいったらないのに可愛いんだからもうね。
 剥がせないよね。
 千鳥は剥がしたそうだけどね。


 上着を脱ぐと千世が執事の如くそれを持ち、両腕で大事そうに抱えてる。
 俺じゃないけど俺の物だから自然とそうなるらしい。出来すぎた犬だ。


 千鳥はソファで珈琲飲みながら仕事をしていたらしく、ローテーブルに紙の束とノートパソコンが置かれていた。
 その紙の束が日本語でも筆記体の英字ですらない事は何も突っ込むまい。

 ソファに座れば肩を引き寄せられて、そのまま倒された。
 来て早々に膝枕ですかお兄様。



「仕事の邪魔じゃない?」
「こっちのが大事」



 犬がジト目で見てますけど。
 眼中にありませんね。

 普段から色気ばっかりな男前のくせに時々可愛い事を言うんだから、ドキドキが多くて困っちゃう。
 なんて思ったけども。それをふざけて言ったら、肉体労働でドキドキさせようとする発言が降ってくる気がしたからやめた。



「お疲れ気味?」
「まあ少しな。お前が癒してくれ」
「出来るか分かんないけど」



 俺なんかα派すら出せないのに何が出来んだって毎回思うけど、それでも千鳥は俺が傍に居て触れていると癒されるらしいから。
 物好きだなぁ、なんて言葉すらも飽きるくらい考えてる。



 


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あきゅろす。
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