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黙ったまま目の前の二人を見てたら、いつの間にやら立ち上がってた金髪が気付いて目が合う。
「こないな平凡くんを【狂犬】がねぇ」
……よし。よしよし。これはバレてないとみた。今の金髪の言葉で確信したよ!
まあバレてもいいんだけどさ、【狂犬】に向かって【黒猫】を捕まえた、なんて発言しちゃったらもう確実にあの人の耳に入って総動員すっからね。
確実にこいつら巻き込まれる側だぜ?
ああ、考えたら笑えねー。
マジだもんな。
うん、前にも似たようなのあったけど、その時の動きはやばかった。
え、やりすぎじゃね?ってくらいの騒動になった記憶がある。
考えてみたら、俺、焔紀にあの場所連れてってもらってからろくなことねー。
楽しいからいいけど。結局楽しんじゃうんだけど。
……今何時だろ。
もう出勤時間過ぎてんだろうな。
だってほら、テーブルの上に置かれた携帯が、さっきからずっと何度も震えてる。
震え続ける携帯はテーブルの上にあるせいで音がでかい。
長いから電話だって誰だって分かる。
部屋は携帯のバイブの音しかしない。
沈黙だよ、沈黙。
別にいいけど、取らないの?まさかのわざとスルー?
長く震えた携帯が静かになる。が、しかしまた再び震え出す。
さっさと出ろやゴラァ、なーんて雰囲気が携帯から漂ってるような気がしな…くもないねうん。
V系な人以外の視線は、テーブルの上で今尚持ち主を呼び出してる携帯に集まってる。
まあ、俺の携帯だからね。
無理だけどね。
誰が掛けてるのかは分からないけど、バイト先からなのは確かで。
ああ、怒られんなあ、なんて思った。
「こんなんでいいだろ、出ろ、アスカ」
「はいよー」
狙ってたんですかそうですか。
すぐに出たら、待ってました!って感じになるからわざと取らなかったんですか。
うん、まあ、そうだとしたらびっくりするけどね。不信感を抱かせたんだろうか。
俺がいつもすぐに電話出てるみたいじゃんね。出てるけども。
ただいま留守にしております、とか言ってふざけてますけども。
第一声のバリエーション増やそうかな。
電話待ってたよ!ダーリン!とか。
……うわぁ、ないな。ないない。
自分で考えて引いた。
でも面白そうだから今度やってみよ。
危機感もない考えを巡らせながら、視線は金髪。
アスカっていうんだ。
女みたい名前は、まあ沢山いますけど何か。
そんな、…そんな言葉言ったら千春先輩に素敵な笑顔向けられちゃうから!どす黒い何かを背後に漂わせた千春先輩に無言の圧力掛けられるから!
「タイミングええ奴から電話やで、ツバサちゃん」
「ちゃん付けすんなっつったろハゲ」
「ハゲちゃうし!」
「良いから出ろよ」
てか、自分は出ないんっスね、ツバサちゃん。
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