07
振り返れば、こっちを見てる二人。
え、なに。
「……オムライス」
「睦月が食べたいものでいいよ」
片や真顔、片や素敵な笑顔。
えー…なにその要求。
「……めんどい」
「却下」
んだとコラ。
しらっと言いやがって。いいさいいさ。
「じゃあオムハヤシで」
「は?」
「え?」
だってハヤシライス食べたい気分。
オムライス拒否は却下されたし。
ぽっかーんとしてる二人に背を向けて冷蔵庫を漁る。あ、卵買わないとなあ。
「……単品じゃねェのかよ」
「文句あるなら作りませんっ」
「……」
超笑顔で言ってやった。
よし、オムハヤシ作ろ。はい決定ー。
「そーいや、朔也先輩遅かったですね」
カウンターで出来立てのオムハヤシを突きながら、ふと思った。
だって、焔紀来たの朔也先輩が店出て十分くらい後だし、そっから三十分ちょいいたんだよ。
買い出しという名の蓮さんのパシリだから、どこ行かされたのかは知らないけど。
ちなみにカウンターでは俺を真ん中に、左に朔也先輩、右に蓮さんが座ってる。
どうやら俺を端にして座る気は更々ないらしい。
今更だから気にしないけどさ、美形に挟まれてる俺って、なんか場違いじゃね?
「情報収集だ」
「……へ?」
答えたのは朔也先輩じゃなくて、蓮さんでした。
朔也先輩を見てたから右を見れば、オムハヤシを既に半分平らげてた。
あ、普通にお腹空いてたんだ。
「情報収集?」
買い出しじゃないの?
首を傾げたら、朔也先輩がクスリと笑うのが聞こえて顔を左に向ける。
「神楽の件だよ」
「ああ、」
なるほど。あてがあったのか。
未だに蓮さんの繋がりってイマイチわかんないんだよな、顔が広いってのは聞いてて知ってたけど。
え、誰にって、この店で一番付き合いが長い千春先輩ですよ。
「なんか分かったんですか?」
「チームの小競り合いとか、個人的な恨みとか、色々ね」
色々、ね。
その中に、特定の誰かが狙われてるっていう話はなかったのかな。
言わずとも狙われてるらしいのは俺ですけど。
知っててもあえて言わないのか、本当に知らないのかはわかんないけど。
それがどこの誰からの情報かすらも。
「ま、面倒になったら本人に直接聞くけどなァ」
「……そっスか」
なんとなく、声がした右側を見なかった。
なんか楽しそうな、本当楽しそうな声がしたのは気のせい気のせい聞き間違い。
まじでやるんだから怖いよね、うん。
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