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06
 



 突然の来訪者とこれまた突然の発言で、俺はただ突っ立って扉を見つめてた。
 だから、気配に気づかなかった。



「オイ、」
「うぁはい!」



 変な声出た。
 振り向けば呆れ顔のくせに大人の色気たっぷりな美形、基、蓮さんが奥の部屋に続く出入口の壁に寄り掛かってた。

 さっきとは違った色気ですね。
 むやみに色気振り撒いちゃいけませんって教わらなかったのか、この人は。
 誰が教えてくれんのか知りたいけども。



「話し声聞こえたンだが、知り合いでも来てたのか?」
「え、あ、…まあ、昔の」
「ふうん」
「内容聞こえてました?」
「いや、声だけ。二階に居た」



 普通にほっとした。
 別に困んないけど、ちょこちょこと知られたらやばい内容もあったし。
 またあの時みたいに質問攻めなんてなったら俺、たぶん全部ぶっちゃけちゃうよ。



「コーヒー」
「ういー」



 焔紀に出したコーヒーカップを片付け、蓮さんにコーヒーを淹れる。
 カップを渡してすぐに鈴の音がして振り向けばそこに居たのは、



「ただいま、睦月」



 イイ笑顔の朔也先輩でしたー。
 そんな素敵な笑顔向けられたらマジで顔赤くなっちゃうから、やめてクダサイ。



「おかえりなさい」
「おー、ご苦労」



 後ろから聞こえた怠そうな声。
 瞬間、朔也先輩の顔がそりゃもう心からうざそうになりました。



「その顔、腹立つんでやめてください」
「ハッ」
「……チッ」



 ちょ、聞きました?舌打ちしたよ今。
 てか蓮さんの意地悪い笑顔がカッコイイとか、朔也先輩の苛立ってる顔とか本当美形ってなんでも絵になりますね。
 え?俺場違い?知ってる知ってる。



「睦月、メシ」


 なに言い出すんだこの人。
 あのー、一応店長ですよね…?



「自分で作ってくださーい」
「シフト減らすぞ」
「え、ちょ、ひど」
「心から死ねばいいと思います」
「ハッ、やってみろよ」
「嫌ですよ、そんな下らない事で自分の手を汚すなんて」



 なんだろう。
 自意識過剰でもいいけど、朔也先輩の発言が「睦月のシフト減らすとかふざけんなテメェは一緒に住んでんだろうがこっちが会えなくなんだろうがクソが」っていう言葉に聞こえた。

 うん、自意識過剰でいいよ。
 でもさっき、ちらっと聞こえたんだもん。それらしき言葉が聞こえたんだもん。
 だもん、とかキモいな。


 てか、結局どうせメシ作んの俺なんですが。

 本気モードとかやめよう?
 プロレスごっことかやめよう?
 物壊れるから。以前そうだったじゃん!
 泉と誰かがプロレスごっこ始めた時には、なんかもうマジだったからね。なんでそうなったかは忘れたけど。


 時計を見れば、午後5時半。
 いい時間かな、お腹空いてきたし。



「なに食べたいですかー」



 傍らにある大きめの冷蔵庫の中を除きながら聞けば、なぜか沈黙。
 え、なに。



 


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あきゅろす。
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