05
「へえ、」
「まあ、お前の性格からして、そこは大した問題じゃねえんだろうけどなぁ」
「やっだ、えっちゃん。失礼だよ」
「事実だろ?むっちゃん」
うん、まあね。
間違ってないよね。
誰かに狙われてるからといって、俺は怯えたり警戒するような性格じゃない。
どんな理由であろうと、どんな状況になろうと俺は変わらないし寧ろ楽しむタイプだ。
「別に心配はしねえが、気をつけねえと纏わり付くぞ」
「それは困った」
前に似たような事があったからなあ。
その時も狙われてたらしくて、その相手と接触してなんやかんやあった後しばらく纏わり付かれてた事がある。
殆ど覚えてないけども。
興味がなきゃ視界にすら入らない。
興味があれば視界に入れる。それだけ。
その相手が俺に好意を持っていたとしても、俺は興味がないから何もしない。
興味があればそれなりに面白おかしくして遊んじゃうんだけどさ、うざったいだけだったなあ。
「まあ、どうでもいいんだけど」
「そうかよ」
あ、呆れてるな。
それから溜まり場での【狂犬】の話を軽く聞いて、あぁ最近の行動の理由はそれか、なんて納得した。
焔紀が店に来て30分くらい過ぎた頃、そろそろ帰るかと呟いて立ち上がる焔紀を見れば、目が合って。
「お前、久しぶりにこっちに顔出せよ」
こっち、てことは店にか。
店に顔出せってか。
「やだよ、行かないって決めたし」
「そんなもん自己満足だろーが。俺がわざわざお呼びなんだ、来い」
「え、なにそれ強制?」
「当たり前だろ?」
まじっすか。
笑えないっス、先輩。
「昔みたいにしてりゃバレねえよ、今も気付いてねえんだろ?」
いや、まあそうだけどさ。そりゃ久しぶりに会えるのは嬉しいよ?
あの人達は変わらず居るって言ってたし。でもさあ、ねえ?
「忘れてんじゃね?」
「まさか。今でも伝説みたいに言われてんぞ、お前」
「えー…ナニソレ」
「本当は存在しないとか存在するとか、色々な」
「……」
「まあ、連絡くれよ、アドレス変わってねえだろ?」
変わってない、けどさ。
なんて言ったら、イイ笑顔が返ってきた。
ちょ、ドキッてしたよ今。わざとですか?
「休みの前の日にでも来いよ、10時以降なら大抵揃ってっから」
「うー…」
「じゃあまたな、【黒猫】」
「……は、」
声は小さかった。
気付いたら既に焔紀は居なくて。空になったコーヒーカップだけが、そこにぽつんと置かれていた。
だがしかし、しっかり聞いたぞ俺は。
絶対わざとだろ今の!聞かれたらどうすんだゴラァ!
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