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二人でひとつ?馬鹿じゃん、僕らは個人だ。‐01
 



 ───そんなもん、ただ同じだから見分けがつかないだけで二人まとめれば楽だからでしょ。




  ‐双子話。






 


「わ、都くん帝くん、お、おはよう!」

「おはよ」
「おはよ」


 朝の決まった挨拶。誰も彼もが、僕らをまとめて呼ぶ。決して別々に、顔を見てはっきり名前を呼ぶ奴なんていない。
 昔は疑問や嫌悪があった。なんで分からないんだ、こんな違うのにって。いつしかそれは呆れとなって、もう慣れた。
 ふざけて入れ替わる事もある。先生も生徒も、気付かない。


 私立東ヶ丘学園高校。全寮制の男子高校に入学して、早三年目。未だに変わることのない、名前も知らない女子みたいな同性たちが僕らに挨拶をしていく。
 どっちが都でどっちが帝か、なんて、やるだけ無駄で凄くつまらない遊びだと気付いたのは、入学から一ヶ月後だった。

 僕らを個人で見てくれるやつは、ここにもいないんだと。
 だけど今の僕らには、充分過ぎるくらい沢山の身近な人達が僕らを知っているから、これ以上いらないんだ。







 僕らは一卵性双生児として産まれた。どっちが兄か弟かなんて興味はないけれど、ひとつでも差をつけないと落ち着かないのか、先に出てきた都の方がお兄ちゃん。
 見た目はもちろん、髪型も背も癖も、声も結構似ているもんだから、父親、おばあちゃんもおじいちゃんも親戚も見分けがつかない。
 ただ、母さんだけは違った。
 何度ふざけて入れ替わったって、母さんだけは絶対間違えた事がない。その度に笑いながら言うんだ。


『───やっと産まれてきてくれた私の子供なのに、間違えるわけないじゃん、馬鹿ね』


 母さんは昔、身籠った子供を生きて産む事が出来なかった。それからやっと出来たのが僕たちで、しかも双子だと知った時、母さんは泣いて喜んだ。同時に、また死んじゃうんじゃないかって不安もあったみたいだけど、僕たちは健康体で産まれてきた。
 だから、絶対間違えたりしないし、むしろ僕たちは同じに見えない、似ているだけだ、なんて母さんに言われたことがある。


『自分たちが正しいと思ったことをして、一緒に居たい人といて。あなた達は全てを共有する必要はないんだから、楽しんで生きてね』


 僕たちは母さんが、母さんの笑顔が大好きだ。



 だから、中学二年のとき、母さんを捨てて愛人を作って出ていった父親を、僕たちは許さない。


 


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