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02
 


 見た目は異名の通り、【白虎】は髪が白く目は金色。
 【青龍】は青い髪に青い目。
 【玄武】は黒髪に白、赤、青のメッシュが入っていて黒目。
 【朱雀】は深紅の髪に透き通る赤。


 名前に添ったというよりは元々好きな色がそれで、そこからも由来が伺える。
 ちなみに【玄武】のメッシュは、ほかの三人が勝手に入れた自己表現みたいなものである。



「本当、なんでそんな落ちてんだよ」



 くつくつと笑いながら【白虎】が投げかければ、【狂犬】は眉間にシワを寄せたまま小さく唸る。



「……バイト先の後輩が狙われてんだよ」



 嫌々呟いた【狂犬】の発言に、初代総長含む五人が固まった。
 要約するならまさかあの【狂犬】からそんな言葉が出るとは、である。



「バイト先の後輩って、後輩ひとりだって聞いたが、なんでまた」
「わかんねぇんスよ、それが」



 焔紀はカップを拭きながら意外そうな顔をする。何故狙われるのか、理由が分からないのだ。


 キレると手が付けられない【狂犬】だが、本来の性格は心配性である。
 それに後輩といえば色々な場面であろうと心配の種になり得る存在で、それがこの【狂犬】の立場であれば尚更。
 【狂犬】は負け知らず。
 その分負けた連中は復讐を企てる。


 どこで聞き付けたのか、それとも相手が自分で知ったのかは定かではないが、【狂犬】はその後輩を好いている。
 人に懐かない【狂犬】だからこそ、必然的に向けられる人質という存在は【狂犬】にとって弱みになる。



「で、その後輩はどんな奴なんだ?」



 気怠そうに、けれどしっかりとした口調で焔紀は神楽に問い掛ける。

 しかし相手は、ぴくりと眉が動きなぜかその問いに答える事を渋るように黙り込む。



「なに、言いたくねぇの?」
「こら【白虎】、突っ掛かると噛まれるぞ」
「……どっちもどっち」
「ぶはっ、ちょ、【玄武】毒舌っ」



 上から【白虎】、【青龍】、【玄武】、【朱雀】。
 【四神】会話は大抵この順番になる。
 話す順番が決められているかのようにみえて、そうではないのだけれど。



「……、普通」
「は?」



 後ろでからかう【四神】を無視して、神楽が捻り出した答えがそれだった。
 焔紀は意味が分からないと言うように顔をしかめ、そしてため息を吐き出す。



「いや、普通じゃわかんねぇから。巻き込まねぇようにすんだから、ちゃんと言え」
「いいっスよ、別に。俺がなんとかしますから。…俺個人の問題なんで」



 あのな、と焔紀が溜息混じりに吐き出した言葉はしかし尽く遮られる。



「良いとこ取りってヤツ?」
「オイ、」
「……【狂犬】だから」
「いや意味わかんないからそれ」



 ぴきっと【狂犬】が青筋を浮かべ、軽くキレるのは約数秒後であった。



「……普通、ねぇ」



 騒ぐ【狂犬】と【四神】を視界にとらえつつ、焔紀は呟く。
 そして何かを考えるように、しかし視線は【狂犬】から外さなかった。


 その後、狙われているらしい後輩の外見的特徴を渋々【狂犬】が話した。

 ちなみに、それを聞きながら焔紀は自分が先ほど考えていた事が確信になったかのように目を細め、一瞬ではあったがニヤリと笑った事に気付いたのは【四神】だけだとか。


 


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