04
思考が、止まる。
いま、あいつ、なんて言った?
「は?何なんだよテメェさっきから、」
「ねえ、どうする?そこの綺麗な顔した金髪くん」
金髪くん───それは、自分に向けられた言葉で。
男たちを無視して声は続く。
視界には、全身真っ黒な服を来て、フードを深く被って顔は見えないが、ぱっと見でも小柄で細身、タメか年下のような奴で。
その自信満々な言葉に、俺はバカにされてんのか、と思ったものの言葉が出ない。
「……ッおい!テメェなめてんじゃねーぞ!」
無視されていた男のひとりが、真っ黒な奴に殴りかかろうとして体を動かしたのが分かって。
危ねぇ…!、と口を開いたのに声が出なくて。同時に、目の前の光景に、目を見開いた。
「……ぐ、あッ!?」
「あっぶねー、落ち着きなよオニイサン」
へらへらとしてた、身動きもしてなかった真っ黒な奴は、男の腕をねじりあげてて。
なんだ、これ。
一瞬、フードを深く被って唯一見えているその口元が、笑みを浮かべたように見えたんだ。
「…はーぁ、疲れた。こんなもんか」
たった数分。今まで喚いてた四人はいま、地面に唸り声を漏らして地面に寝転んでいる。
息を吐いた、疲れたように見えない真っ黒な奴には傷ひとつない。
見惚れるほど滑らかで、早く、キレイで、そしてそいつは見た目を大きく裏切るほど強かった。
「───新人サンに限り、」
両手をパーカーのポケットに突っ込んだ状態のそいつは、いきなり言い出した。
気付けば薄い口を開けていた俺は、はっとして口元を引き締める。
「初回無料特別、…二度目はねぇよ」
「……は?」
なにを言ってんだ、コイツ。
その言葉の意味もわからず、そいつをじっと見ていたら。
奴は一言、「じゃあね」、と言ってこちらに来ることもなく、背を向けて歩き出した。
「……はあ?」
体の痛みを忘れるくらいに意味の分からないその行動に、ただ混乱するばかりで。
「意味、わかんねえ」
[*][#]
[戻る]
無料HPエムペ!