03
それから数日。
俺は、後々不良たちの間で有名になる、不思議な奴と出会う。
ドカッ、と体が地面に倒れ込む衝撃が、全身の痛みを悪化させた気がした。
「───ガキが!舐めやがって」
「ははっ、よえーくせに喧嘩すんなよ」
「…っあー、アザ出来たわぁ」
「ガキにマジになんなよな」
声ははっきり聞こえんのに、目の前がぼやけてる。身体中が痛い。
…そうか。
そこで初めて気づく。
俺は、負けたのか、と。
「───ッ、チッ…」
思わず出た舌打ちに、心中でまた舌打ちをした。男たちの声が止まったからだ。
「オイ、こいつ今、舌打ちしやがったぜ」
「はぁ? ほっとけよ」
「生意気なやつだなァ」
「つーか中坊だろ、意気がってんな」
ザリッ、と地を踏みにじる音がして。
あぁ、ヤバいな、と何故か変に落ち着いて考えてて。
笑い声が聞こえる。ゲラゲラと。
「ぶち殺してやろーか」
「バーカ、マジになんなってー!」
少しずつはっきりしていく視界。
目の前に、近くの高校の制服を着崩している四人の男。
体は動かない。痛い。
喧嘩を売られて買ったのに、セコい技使われて袋叩き。いくら同じ男でも、高校生と中学生じゃこんなに違うのかと、自分はこの程度なのかと、思い知る。
覚悟を決めて目を閉じ、歯を食い縛った、瞬間。
「───ねぇ、そこのオニイサンたち。駅ってどこだか知らない?」
場違い過ぎる言葉と、透き通るような声が、した。
なんだ、と一瞬、頭の中が真っ白になって。
ゆっくりと目を開ければ、四人の男の後ろに、全身真っ黒な奴が立っていた。
「あ?何だよお前。駅もしらねーの?」
「だっせー」
「そこ真っ直ぐ行けよ。つかもう見えてんじゃん」
ゲラゲラと笑う四人と、
「えー?あ、本当だ。ありがとー」
へらへらと笑う、声。
どこをどう考えてもおかしい。
この状況、そいつのしゃべり方。ここは、路地裏なのに、わざわざ来たってのか。
「わかったらさっさと、」
「というかさ、それ、リンチしてんの?」
「はぁ?関係ねーだろ、行けよ。うぜぇ」
そうだ。関係ないのにわざわざ───
そこでまた、そいつの言葉に耳を疑った。
「助けてあげようか、新人サン?」
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