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泉神楽の出会い。‐01
 


 自分の人生がどんなモンだったかなんて、その頃の俺に分かるわけもなく。

 小学生の頃、外人で酒癖の悪かった父親は愛人を作って家を出て行って、育ち盛りの俺を女手ひとつ育ててくれた日本人の母親は、中一の秋になりかけた時、呆気なく死んだ。
 今時の不景気じゃ珍しくもない過労死だった。

 中一で両親をなくした俺に(父親が帰ってくるわけもなく)、親族もなく、母親がひそかにずっと貯めていてくれたお金で、中学卒業までは何とかやっていけると分かって。

 近所で母親と仲がよかった親切なおばちゃんが、俺の親代わりになってくれたおかげで施設に入ることもなくて。
 一人きりになったアパートで、静かに、本当に静かな暮らしが始まった。



 そんな生活に慣れた頃。
 俺は時々夜中に外へ出ては、馬鹿みたいな顔としゃべり方のいわゆる不良たちに絡まれ、喧嘩を買っては勝ち、ふらふらになって帰る日々になっていた。
 喧嘩を売られるのが、父親から遺伝した顔立ちと金髪が原因だと知っていたし、学校では時折からかわれた。
 目付きが悪いせいで学校では近付く奴もあまりいなかったけど。



「───入れよ」


 そんな、退屈で同じように過ぎる日々を簡単に変えた男と出会ったのは、中一の冬。

 いつものように夜中に外へ出て、喧嘩を売られ、勝った後、帰る気分になれずにフラフラ歩いているうちにたどり着いた静かな場所。
 そこにあった一軒の目立たない小さな店に入ろうとしていた男と目があって、男は一言そう俺に投げ掛けた。

 ちなみにその男、同性の俺から見ても、あり得ないほど整った容姿で。つか完璧過ぎて一見して欠点が見つからない…!


「ほら、寒かったろ。飲めよ」
「……ど、うも、」


 誘われるまま入れば、暖かい光と、数人の高校生くらいの男達が奥のソファーがある席で集まって会話をしていて。


 平然とカウンターに入った男は、カウンターの端に座った俺に白いマグカップを差し出して。
 ゆらゆらと湯気の立つカップには、黄色い固形物が浮くコーンポタージュで。

 一口飲むと、冷えた体の中に温かい液体が通っていく感覚がして、息を吐いた。



 


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あきゅろす。
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