06
「……」
「……」
こいつ、どんな声してんだろ。
リビングのソファー、隣に捨て犬君を座らせて遠慮なしにじろじろと見る。
綺麗になった銀色の髪の毛。曇りのある銀灰色の目。俯いている捨て犬君からは何の感情も読み取れない。
「朝になんなきゃわかんないかー」
どうするかはそれから決めればいい。
そう自己解決して、何となく銀色の髪に触れた。光でキラキラと輝いて、眩しく感じるその髪が全て異常に長く、どれくらい前からあの場所にいたのかを予想させる。
元々の長さなんて分からないけど。
「お前は捨て犬なの?」
「……」
無言。
そりゃそうか。と気にしないでいた。
いきなり知らない所に連れて来られて普段通りにしろ、なんて無理だ。
俺は出来るけど。
よく見れば肌は白くて、風呂に入れた時も気付いたけれど体中ちょいちょい傷がある。かすり傷、というよりは、人の手でやられたような傷だ。
ぼんやりと思いながらも見ていたら、捨て犬君の体が微かに跳ねた気がして。
いつの間にか、髪を梳いていた手が頭を撫でていた。
「……ねぇ、お前、ひとり?」
返事を期待しないで聞いたのに、予想外にも捨て犬君は小さく首を動かした。
びっくりして目を見開いて、撫でていた手を止めてしまった。
言葉が分からないわけじゃないらしい。
縦に動いた。それはひとりという肯定。
知っているのか、自分がひとりだと言うことを。誰かが迎えに来たり、助けたりしないことを。
「……」
ってことは日本人?それかハーフかな。
俺と同じ年くらいに見えるけど、こいつとの身長差が予想を邪魔して上に見える。
まじまじと見ていたら、ガチャン、と玄関から音がして、千鳥さんが帰ってきた事を知らせた。
「睦月、もう寝とけ」
リビングに入ってくるなりそう言った千鳥さんは、テーブルにあったマグカップを手にキッチンに入った。
ソファーから立ち上がってキッチンに向かう。
「一緒に寝てもいい?」
「好きにしろ」
いつもと変わらない態度に安心して、お礼をひとつ、ソファーに戻った。
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