04
───びっくり。こいつ髪の色、銀だ。
風呂に連れ込んで、服を引っぺがせば痩せこけた体。それに傷だらけ泥だらけ。
何をしても無反応な捨て犬君に溜息ひとつ、熱すぎないお湯を足先からゆっくりとかけていく。
座って、と言って肩を軽く下に押せば、そのまま座ってくれたけど、イマイチ言葉を理解出来てないような気がした。
押したり引いたりしながら言わないと反応しないし、言葉なしに体を押したり引いたりすればそのまま動くから。
外人かな、なんて思った。色で。
「なんだ、綺麗な顔してんじゃーん」
風呂上がり、わしゃわしゃとタオルで長い髪の毛を拭きながら言った。
オールバック状態の捨て犬君は、いわゆる美少年で、なかなか中性的な顔をしてる。髪も睫毛も銀色、目は銀灰の色で吸い込まれそうな色だけど、どこか陰がある。
それでも綺麗だと思った。
この目に映る自分は、鏡で見る自分とは違うのかもしれないとも。
千鳥さんが出してきてくれた服を着せて、手を取ってリビングに入れば、知らない男の人がいた。
「はじめまして、睦月くん」
「……はじめまして」
千鳥さんの古い知り合いらしいその人は、表では扱えない患者を診る医者らしく。腕は確かなんだろうな、と思う。千鳥さんの知り合いだから。
垂れ目気味なその人は、柔らかい印象で、長いストレートの黒髪はひとつ結びにしていて眼鏡をかけている。
「……ふぅん、なるほどね」
いわゆる闇医者、翡翠(ヒスイ)さんが俺の後ろにいる捨て犬君を目を細めながら見る。
なにがなるほど、なのか分からないけど。
翡翠さんの横にいる千鳥さんを見れば、コーヒーカップ片手にテーブルに寄り掛かっていて、あんまり興味なさそう。
「明日、うちで検査してみようか」
そう言って微笑む翡翠さんは、千鳥さんを見ている。
興味なさげな千鳥さんは一言、「好きにしろ」とだけ言ってコーヒーを飲んだ。
「朝にまた来るから、一緒にいてあげて」
「はい」
何か理由があるのか、なくても一緒に寝るつもりだったから素直に返事をした。
それから翡翠さんが、今日は帰るね、と言って千鳥さんと一緒に家を出て行った。
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