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02
 



 ───外は暗く、まだ少し肌寒い風が吹きつける、季節は春。
 全身真っ黒の恰好で、黒いパーカーのフードを深く被って紫色のカラコンを付け夜の散歩を楽しんでいた時、人通りが少ない道の路地を通り過ぎようとして、足を止めた。


「………?」


 その路地は街灯の光りが届かない場所で真っ暗闇だったのに、何故かそこになにかいるような気がして。
 足を路地に向け、真っ黒な服を着た俺がまるで闇に溶け込んでいくように路地に入って行った。


「………」


 路地の一番奥。
ほんの三、四メートルくらいの距離だったけど、そこに、何かはいた。うずくまっている、ように見えた。
 暗くてよく見えない。
 パーカーのポケットに入れていた携帯を取り出して、開いただけじゃ光が乏しかったから内蔵されたライトを点灯した。

 突然の光に驚いたように身動きしたそれは、人間で。
 その色に、俺は目を見開いた。

 光に反射してるせいで、真っ白にも見える髪の毛は長くボサボサで所々が汚れている。服だってボロボロで、元々白かっただろう無地のロングTシャツはくすんでた。
 下も同じように、たぶん元々白かったはず。



 ゆっくりと、そのボロボロの人間が顔を上げた。髪が揺れる。
 だけど、髪の毛が長すぎて顔はよく見えなかった。


「───お前、なにしてんの」
「………」


 瞬間、携帯のライトが消えてまた真っ暗闇に戻った。



「……めんどいな」



 ぽつり、と自分にだけ聞こえるような声量で呟けば、覚えていたそいつの腕の位置に手を伸ばした。








「…ふう」
「………」



 路地から出て一息。
 右手には腕が捕まれ。
 何でそうしたのかは分からないけど、俺はそいつの腕を取って引っ張って、路地から出て来たわけだ。

 振り返れば、俯いたまま微動もしない人間がいて。
 そこで初めて、そいつの身長が俺よりかなり高い事に気付いた。


 …百八十近くはありそうだ。


 


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