06
マンションに帰宅後、三人して冷蔵庫前で食料品整理。
地味に楽しいんだよね、コレ。
どんどん冷蔵庫に中身が入って、八分目くらいまで埋まる。
今日の夕ごはんのついでにお節の仕込みをするらしいので、その間に俺はソファーにのんびり座って蓮さんにお電話タイム。
手伝い?
言ったさ、手伝うよって。
そしたらさ、お前は店に電話しとけって放られちゃったのさ。
ちなみに千世は手伝わされてるさ。
基本的な事は教えられたから、うちの犬は料理も出来ちゃいます。有能過ぎて笑うしかないって。
携帯を耳に、呼び出し音を聞きながらソファーに膝をたて体ごとキッチンに向けて千鳥と千世を観察。
写真撮ったら高値で売れそうだ。
プツリ、と呼び出し音が切れる。
『───遅い』
「出だしそれデスカ」
確かに一ヶ月は過ぎてるけど、久しぶりの会話の第一声が「遅い」ってどうよ。
なんかちょっと寂しいっス。
『で、体調は?』
「ばっちしっス!」
『……』
「すんません!」
声だけ聞くとハイテンションに聴こえるんだろうけど、至って普通。
むしろ真顔ですがなにか。
「年明けに出勤します」
『……そうか。三が日は休みにしてっから』
「はい。じゃあ四日に行きます」
『……』
「あの…?」
『変な伝言寄越してンじゃねーよ。待たされる身にもなれ』
「……ごめんなさい」
言葉はキツいけど声は柔らかかった。
どうでも良さそうな言い方にも似てる。
それでも、俺の事で店の全員にも心配かけた事は謝りたい。例え悪いとは思っていなくても。
『待ってる』
「……っ、はい」
その声があまりに優し過ぎて。
顔に熱が集まってくのを感じて、体を回転させてキッチン側に背を向けた。
電話はもう切れてる。
ソファーの上で膝抱えて、顔を埋めた。
電話越しなせいで色気が果てしない声がダイレクトに耳にキタ。
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