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このバカでかいマンションが家か。
やりおるな。
背を押されてマンションのロビーに入り、オートロックの暗証番号を入力しているのを見ていると、自動ドアが開いた。
もちろんセキュリティはばっちりなはず。
月いくらかかるんだろ。考えるのも知るのも恐ろしいから、なにも言わない事にして。
エレベーターがあるエントランスも広い広い、もうなんじゃこりゃって感じだ。
だってエントランスにソファーだよ?くつろぎ空間なんていらなくね?
「ボケッとすンなっつの」
「……うい」
蓮さんは既にエレベーターに乗り込んでて、俺が来るのを待ってる。
急いでエレベーターに乗り込めば、そりゃもう当たり前みたいに1番大きい数字のボタンを押す。
最上階デスカ。べ、べつに驚かないもん。
特有の浮遊感に時間すら長く感じて、ぽーんっとふんわりした音が鳴る。
ぽーんって。高級ホテルかコラ。
ドアが開く。
ふわふわな絨毯を見る。
どこまで驚かすつもりですか。ここは本当に住居ですか。もー、部屋とかすごそう。考えんのやめよ。
絨毯の上を歩いて、きょろきょろしながらも蓮さんの後ろを追えばたどり着いた、1番奥の角部屋。蓮さんが段ボールを下に置いて鍵を取り出す。
ドアが開いて、隣を見れば。
紳士的な一面もあるんですねー、なんて言わないけど俺が入るように待ってる。
「……お邪魔します」
「ハイどうぞ」
ぶっきらぼうな返事を聞きつつ上がり込めば、玄関と奥の扉まで少し長めの廊下。
廊下の左右にはドアが三つ。
さあ、これからどんだけ未知との遭遇が待ってるのかな!
玄関を入って廊下の先にある一番奥の、曇り硝子がはめ込まれた扉を開ければ。
「……はあぁぁ」
「なに溜息吐いてンだよ」
「いえ、べっつに」
「はあ?」
そりゃ溜息も吐きますとも。
ひろーいリビングを目の当たりにすりゃあさ、今までアパートだったわけだし。
でかい窓から見える景色は、夜になれば絶景だろう。今も絶景だけどさ。
それに、右向けば最近の薄型テレビ。
40はあるよ、あの大きさ。向かいにテーブルとソファー、一人暮らしには有り余るデカさ。
畜生、金持ちめ。
脇にはCDが詰まったラックとコンポ。中身は綺麗に整ってる。
左を見れば、カウンター付きのシステムキッチンに、四人掛けくらいのダイニングテーブルとか。
冷蔵庫もデカイし。
本当に一人暮らしか?って思うくらいの空間が出来上がっている。
この部屋から繋がる部屋があるんだろう、左右に扉がある。
「おら、荷物片すから来い」
「……あ、ハイ」
見まくってた俺の頭を軽く小突いて、蓮さんは右側の部屋のドアを開けてた。
付いていけば、そこも広い部屋。
「お前の部屋だから、好きに使え」
「え、あ、ありがとうございます」
見れば、ふわふわしてそうなベッドにテーブル、棚とクローゼット。
俺が好きなシンプルにモノクロ。
私物が少ないから、どうも殺風景になりそうな予感しかしないけど。
「片したら出掛けるから」
「はあい」
蓮さんが言い残して出ていけば、部屋にひとりになる。ドアは開きっぱだけど。
息を吐いて、置かれた段ボールを開けた。
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