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 ───目の前にいるのは間違いなく店長で、なんかもう楽しそうなイイ笑顔。
 とりあえず目立つ。あんまり一緒に歩きたくないよ、嬉しいけど。


 店長は脇に置いてある段ボールに近付いて、躊躇なくそれを持ち上げた。



「え、ちょ…良いですよ、自分で持っていきますから」
「トロいから無理。早くしろよ」
「えええー、なにそれ…」



 慌てて立ち上がるも、既に店長は出入口の前に立ってるとか早すぎ。

 携帯と財布は手元にあったからポケットに入れて後を追うように小走り。
 後ろから清水さんもついて来て、外に出るまでの間すれ違い様に店長を見てびっくりした後に俺に気付いて更に驚く署の人達に、お世話になりましたと軽く挨拶をしながら歩く。


 すんごい恥ずかしい。
 なんかすんごい恥ずかしいよ。


 外に出れば見慣れた黒塗りの車があった。一直線で店長はそこに行き、後部座席に段ボールを置いている。



「じゃあ、元気でな」
「あ、はい。…ありがとうございました」



 ぽんぽんと頭を撫でられながら元気でと言われたら、はいって返すしかない。
 たった三日程だったけど。

 店長に促され助手席に乗ると、店長は清水さんと軽く会話をしてから運転席に乗り込む。


 何を話したかは分からないけど、まあ気にする程でもないだろうし。
 あっという間に過ぎた事件。
 ぶっちゃけ事件より衝撃的なのは、店長との同棲発言だけれども。だって、つい忘れちゃうくらいなんだから。


 緩やかに走り出した車から見る景色は都会だけど、なんだか落ち着いた。
 これからどうしようとかそれよりも、これからどうなるんだろうってのが強いとか、本当どんだけ。

 そういや店に寄るのかな。



「店長、店には寄るんですか?」
「寄るわけねェだろ」
「え、」
「誰がンな事してやるかよ」
「……」


 ハッと鼻で笑う横の男前。
 車を運転する姿は世の中の大抵の女性を虜に出来るよ、店長。
 ……ってことは直帰?店長直帰?
 今日出勤じゃないの?
 よくわかんないけど、まあいっか。



「睦月、お前これから名前呼びな」
「ハイ?」



 なにを言い出すんだこのお方は。
 なんだなんだ。名前呼び?だれを。



「家にいてまで店長呼ばわりされンの鬱陶しいだろーが。だから、」
「それ…姓で良くないですか」
「却下」
「……、なんでですか」
「なんでも」
「んな勝手な…!じゃあ……蓮さんで」
「………チッ」
「…えっなんですか今の舌打ち!みんなそう呼んでるじゃないですか」
「うるせ」



 俺様ってか我が儘…。
 なんて言ったら何されるかわからないから言わないけど、とりあえず呼び捨ては個人的にNGだから『さん付け』で良し。
 みんなそうだしさ。うんうん。

 ひとりで納得してたら、気づけば車はとある駐車場で緩やかに停まった。
 目の前にはデカいマンション。
 え、これ?



「着いたぞ。ホラ、おりろ」
「……ふぁい」



 びっくりしながらもとりあえず出る。
 後ろから段ボールを出すのに、店長、いや蓮さんは後部座席を開ける。
 ドアが閉まった音がした後、背中を軽くどつかれる。



「なにボケッとしてンだよ」
「てん…、蓮さん金持ちー」
「うっせえな」



 あっぶね。
 今店長って言いかけた。
 言いかけた時に、ぴくりと蓮さんの眉が上がったのはこの際見ないフリ見ないフリ。


 


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あきゅろす。
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