20
───それからなんやかんやと時間は過ぎて。
美味しい夕ご飯をご馳走になって、今はもう8時を回ってる。明日はちょっと用事があるから丁度良い。
「…それじゃあ、」
「おう。後ろに気をつけろよ」
「何それ」
玄関前。
焔紀はいつもと変わらない雰囲気で、頭を撫でる手も変わらない。
腕が使えなくなったわけじゃないから、と楽観的に言われたものだからそれ以上とやかく言えないわけで。
千鳥が先に出てろって言うから、千世と手を繋いで表に出て空を見上げた。
「……睦月?」
「なーに」
静かな夜。冬が近い、冷たい風。
年越しは室内か外かどっちだろ。
また鍋囲みたいなあ。
羞恥プレイは微妙だけど、楽しい事には変わりないわけだし。初詣は、千鳥と千世とで行こうかな。
…クリスマスとか、あるし。
サンタの格好してみるか。
女物とか渡されそう。
「……」
「どうしたの?」
そんな目で見るなよ。
千世は多分、直感的に気付いてる。
「大丈夫だって」
「……」
こくりと頷いたのを見て、笑う。
大丈夫、だなんて。
命の保証は出来るんだけどね、それだけだ。自分に言い聞かせてるみたいにも感じて来ちゃったよ、言い過ぎて。
千鳥は焔紀と何を話してるんだろう。
まぁ、必要ならその場に居させて聞かせてるだろうから、俺には関係ない事なのかもしれないし。
そーいや、焔紀の店が無くなっちゃったからたまり場も無いわけだよな。
どうすんだろ。
家をたまり場にはしないと思うし、その事で話してんのかな。
ん?
そしたら別に俺が聞いても問題なさそうなんだけど。他の話もあるからか。
…ま、いいか。聞かなくても。
ぼんやりと前を見てたら、繋いだ手に力が増した。
不安なんだろう。
これからどうなるのか、俺がどうするのか、そんな事いくら千世でも分からない。
分かったとしても止めないから。
俺が千世に言わない限り。千世は俺の言うことしか聞かないから、俺のやる事を否定出来ない。
そんなポジション与えといて、今更こんな事思ってる俺も俺だけど。
[*][#]
[戻る]
無料HPエムペ!