19 俺は自分がやろうとしてる事は変えない。それがエゴだとしても。 都会的な雰囲気から外れた、自然が目立つ場所にある古風な平屋。 そこが焔紀の家。 「おー、来たか」 玄関前で変わらない笑みで出迎えてくれた焔紀の右腕には、手首から肘の少し上まで包帯が巻かれてた。 「……腕、どう?」 「まったく問題ない。気にすんな」 立ち話も難だから、と居間に通された。 縁側が見えて、あそこで昼寝したら気持ちいだろうなぁなんて思う。 「よぅワンコロ。随分落ちてんな」 「………」 「まあ、ね」 相変わらず背中に引っ付いてる千世を見ながらも、返事はないと分かってて言ってるよな絶対。 「焔紀、やっぱ傷残るの?」 千鳥は縁側にいる。 柱に寄り掛かって目を閉じてるけど、会話は聞いてるだろう。 「あぁ、薄くはなっても目立つだろうな」 「……そか、」 無意識に頭を下げていたのか、頭に手が乗った感覚がした。 「こんくれーで済んだし、死人もねぇ。怪我も俺だけだ」 「……うん」 そう言われても、結局怪我人は出てるわけだし。 「睦月、」 「うん?」 少しだけ声が重くなった気がして、顔を上げたら焔紀と目が合う。 「早まったことすんなよ」 「……」 一瞬、何のことだか分からなかった。 …俺がやろうとしてる事を見通してる。 だけどそれをはっきりと言わないし止める事もしない、ただの警告のような言葉で。 「……約束は出来ない」 「だろーな」 嘘をついても意味がない事を知ってる。 無駄に聡いこの色男と、縁側にいる色男にそんなもん通用しないんだから。 困ったもんだよな。 「けど、大丈夫だよ」 「……、…そうか」 わしゃわしゃと髪を掻き回され、にっかり笑顔を向けられてドキッとしたよ俺。 「あいつん家に居んのか?」 手を離して、寛ぎながらどうでもよさそうに聞いてきた。 指差してるその先には、千鳥。 「うん。帰ったってカンジ」 「何だよ。俺ん所くりゃいいのによ」 「お前の所なんかにやるかよバカ」 やっぱ聞いてたよ千鳥。俺より先に即答したよあの人。 [*][#] [戻る] |