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 翌日、早めに起きて大方の荷造りをしてからリビングに行けば珍しく蓮さんが起きていた。
 いつもは部屋で寝てるのに、ソファーに座ってテレビを見てる。



「……おはようございます」
「あァ、」



 既に私服に着替えている俺を見て、蓮さんが目を細めたのに気付いた。
 喉が乾いてたから冷蔵庫からお茶を出してコップに注いでソファーに向かう。


 千鳥の迎えは、午後。
 あと3時間弱でここでの生活は終わり。三ヶ月半の、長いようで短かった時間。


 普段と変わらず隣に座れば、目だけで追って見られてた。



「……」



 お茶で渇きを潤して、テーブルにコップを置く。
 テレビではニュースが流れてて、蓮さんはそこに視線を向けてるけどあんまり興味なさそう。



「蓮さん」



 呼べば当たり前のように向けられる顔と目。整い過ぎて怖いくらいの綺麗な顔が間近にある。



「ありがとうございます」



 なにが、って返されると思ってたけど、返事はなく無言。
 でも目は反らさない。



「俺、あの店を見つけてなかったり、受からなかったりしてたら、こんな風にありのままで居られなかったかもしれない」



 それはただの想像だけれど。



「あの時蓮さんがここに俺を置いてくれる事を言わなかったら、俺、住み込み出来るか聞こうと思ってたんですよね」



 あの時千鳥に頼る事を忘れるくらい混乱があったのを、落ち着いてから気付いた。
 俺は結局不安定で切ることをやめられなくて、久しぶりに千世に会ってそれまで癒されてなかったんだとか、千鳥に会って心から安心した事に気付いた。


 自分勝手で最低最悪な俺の行動を、蓮さんは非難しない。
 どうせなら突き放してくれればいいのにとか、それなのに心のどっかで真逆の事を思ったりして。
 それでも俺は変わらないんだけれど。



「迷惑かけてごめんなさい」



 色んな意味合いを込めて。







 3時間なんて経つのが早くて、もう下で千鳥が待ってる。
 荷物はもう車の中にあって、俺は今玄関前にいる。向かいには蓮さんが立ってる。読めない表情で。



「…それじゃあ、」
「連絡寄越せよ」
「はい。……お世話になりました」
「……あァ、」



 頭を下げて、上げれば蓮さんの手に伸びた髪を撫でられた。



「…いってきます」



 それを言った理由は自分でも分からないけれど、蓮さんがいつも通りにニヤリと笑うから、少しだけ安心した。


 


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あきゅろす。
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