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 ───放火した犯人。

 先日の出来事は、千鳥から聞いていたらしい焔紀も放火の犯人の推測をしてた。


 その推測が確信になったのは、火事の直後に来た電話だと。
 御景が直接、どこで知ったのかは分からないけれど焔紀の携帯に電話してきたと。



「どういうことだ」
「……今回の事に関して、迷惑をかけるつもりはありません。俺はこの店が好きだし、一緒に働いてる皆を大切だと思ってます。だから、…」



 あいつは、目的の為なら手段を選ばない。
 その目的が俺なら。
 御景が俺を見つけるまで、俺が御景に会うまで、関係ある全ての場所や人達を調べて焔紀の時みたいに手を出す。

 御景は甘くない。
 放火だって、ギリギリまで五人が気付かなかったから焔紀が怪我をした。
 いくら火傷が酷くても、あれで済んだらマシな方だ。あいつは躊躇いなく殺すつもりだった。


 だから、今やれることをやる。
 この店も蓮さんにも千春先輩にも、朔也先輩にも泉にも、手を出させるつもりはない。


 あの時の唯一の居場所だったから。
 居場所を与えてくれた人達だから。
 いくら情のない俺でも、大切だと思った人達はそこから遠ざけたいと思うよ。

 自分の力量は分かってる。
 ここに居つづけて、御景から守るなんて出来ないから。



「……お前が辞める事に許可は出さねェ」
「───…なん、」



 その言葉に、ばっと顔を上げて蓮さんを見れば、ニヤリと口端を上げてて。

 …何で、笑ってんだ。



「ただ、」



 思わせ振りに言葉を途切って、何かを考えてるみたいな仕草の後、蓮さんは口を開いた。



「───休暇を取れ」
「………は…?」



 休、暇…?


 予想外の言葉に、思わず素で出た声。
 そこから、何を言ってるんだと思って眉を潜めれば。



「お前、幼なじみのオニイサンとやらの所に移る気なンだろ?」
「………?」



 いや、うーん…。
 確かにその事も話すつもりだったんだけど。



「それなら尚更、辞めさせねェよ。俺が簡単にお前を手放すとでも?───言ったはずだ、その代わり、ってな」
「……っ…!」



 移住すんの許す代わりに辞めんなってかオイ。
 いまいちシリアスになれないんですけど。


 とりあえず、笑みを深くした蓮さんが妖艶過ぎる。


 


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あきゅろす。
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