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 ───街の明かりがあまり届かない夜の黒。
 普段は外灯の光りだけのその場所が、今は夕方くらいに明るい。


 頭上に広がる黒に向かって伸びていく白と、辺りを照らす赤が、笑っているかのように揺れている。



「…っ、焔紀さん、」
「あぁ…気にすんな」



 発生源から少し離れた場所に立つ男に、白髪の青年が慌てたように駆け寄る。
 青年の後ろには、鮮やかな色の髪を揺らす三人の同じ歳の青年達がいた。


 白髪の青年の視線は、男の右腕だった。
 腕は赤らみ、痛々しい色に染まり本来の色を失っている。



「……ハッ…」



 男は口端を上げ、目の前の光景を見る。
 自分が大切にしていたものが、呆気なく崩れていくのを。



「……焔紀さん?」



 白髪の青年の斜め後ろに立っていた、鮮やかな青い髪の青年が、焔紀を見て眉をひそめた。






 青年達と男は、同じ場所にいた。
 いつもは騒がしいはずなのに、珍しく人がいなかったその場所は、天王焔紀が所有する店である。
 焔紀が造ったチーム、『tutelary』の専用たまり場として、学生時代に建てた店だった。



 ───偶然か。それとも必然か。
 親しい友人から、数日前の出来事を聞いていた。
 裏で手を回したんだろう。今いる四人以外、店には来なかった。
 多分気になって来たんだろうが…。
 とんだ巻き添え食らったな。

 四人に傷はない事を確認して、焔紀はただ目の前の光景を見つづける。



 真っ先に異変に気付いたのは、店にいた青年達四人のひとりだった。
 普段穏やかな【玄武】、龍ヶ崎社が異臭を感じ取り、そのすぐ後に、赤を見た。

 素早く四人を店から出し、自分が脱出する際に右腕に傷を負った。


 こんな場所で、いくら冬だからと言ってもいつも注意してきた事だ。
 今までは無かった事。だからこそ、すぐに気付いた。



「…やりやがって。あのガキ」



 しかし、ここまで早く手が延びるとはな。少し甘く見てたか。
 …まぁ、この程度で済むならまだマシか。



「……早まんなよ、睦月」



 大切にしてきたモノを簡単に壊した、その人物を知っているかのような声も、案ずるその声も、崩れながらも燃え盛る音に掻き消されていく。



 遠くで、赤いライトとサイレンが近づいていた。



 



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