04
繋いでた手を離され向きを変えられて、片手で後頭部を押さえられて抱きしめられてる。
千世の声がしないから、たぶん放心状態なのかもしれない。
「…なんだ、思ったより、早かったね」
「テメェに言ったはずだ」
「やだな、近付いてねぇし。二メートル」
「それじゃねぇ事くらい分かってんだろ」
くすくすと笑う声が聞こえる。
てゆか、二メートル指定したのか。
二メートル以内に近付くな、とか言ったのか。
なんで俺、こんなに安心してるんだろう。そこで、俺自身落ち着けてなかったんだと気付く。
「……ち、どり」
「…黙って目ぇ閉じとけ」
小声で、しっかりと返ってくる声に安心した。
千世は、と思って顔を横向きにして視線を上げたら、予想外すぎて目を見開いた。
千世が千鳥の肩に顔を引っ付けてたから。
てゆか後頭部に千鳥の手があるから、千鳥が引っ付けたんだろうけど。まさか素直にじっとしてるとは。
千世の表情は見えない。
ただ黙って、大人しくしてる。
「関わるな、と言ったはずだが?」
低音の声が聞こえる。
千鳥の雰囲気はあまり変化がない。いつも通りにしか感じない。なのにドキドキする。
「素直に言うこと聞くと思ったの?」
「思っちゃいねぇから今ここにいんだよ」
鼻で笑う千鳥は、あいつの事全部知ってるような口ぶりで。
俺、詳しく言ってないのに。てかそれ以前に自分でも忘れてたのに。千鳥はいつ会ったんだろう。
そこでふと、思い出した。
最近、夜の世界で相次いで暴行事件みたいなのが起きているらしい。
被害にあっているのはいずれも『tutelary』のメンバーで、傘下チームにも被害が出たりしていたから目的が曖昧なんだって。
幸い殺人はないけれど、傷が酷くて何人も入院してる。
聞いた話、その犯人はいつも一人で被害にあうのは一人ずつで一方的に暴力を加えるらしい。
そして、気を失うまで暴行を受ける。
その時毎回、犯人は相手に聞いている事があるらしい。
『黒い猫を知っているか』、と。
その話をしてくれたのは双子で。
また何かしたの、なんて聞かれたけどその時は心当たりなんか無くて。
でも今は、心当たりがありすぎる。
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