13
着せ替えとかさせられんのかな。
こんな地味な人形でいいのか。もっと美形でやるべきだって。
「睦月?どうした」
ふと隣から声をかけられて我に返った。
「睦月?」
「あ、いや、」
とりあえず、目の前の雑談から軽く意識を遠ざけたくて。
「そーいやさ、なんでこれ猫耳なのに、尻尾がついてないんだ?」
そんな疑問を口にしたのがいけなかったと、あとになって気付く。
聞こえたらしい向かいにいた棗が、一瞬きょとんとしてから、さも当然とばかりに口を開いた。
「尻尾は当然、バイブつ」
「ごめん、やっぱいい。言わないで」
まだ俺には早い。
うん、まだ早い。
俺にもまだ早いことを棗が口にしてることに疑問はないのかとかは、置いとこう。
うん、よし。
とりあえずせっかくメイド服着てることだし、お茶でも入れてこよう。
「お茶はいかがですか?ご主人様」
「ダメダメ!猫耳つけてる時は語尾に、にゃをつけなきゃー」
……普通にダメ出しされちゃったにゃん☆
「………はー…」
それから約2時間。
話題は専らコスプレで。
解散したのは日付が変わった深夜1時。夜中に何やってんだっつー話ですよ。
俺はというと、解散後にテーブルやら片付けて風呂に入ってた。
つうか何で慧はあんな服持ってんだろ。まさか趣味…!?
……ないな。ないない。
居間に戻り、ソファーでコーヒーを飲んでた千鳥の隣に座って、ふと気になった事を聞いてみた。
「千鳥ってどんなコスプレ好きなの」
何となく聞いたのに、千鳥は何故かカップを持ったまま固まっていた。
どうした。
「………千鳥?」
声をかければ、我に返ったように瞬きをしてカップを置いたと思ったら。
「え、……え?」
ぐらっと視界が回って、気づけば目の前に綺麗過ぎる顔が。
その口元は笑ってる。
「知りたいのか?」
「………」
なんだろう。
なんか知りたくないんだけど。
「俺は猫が好き」
…え。まさかの擬人化希望!?
思わず目を見開いたら、クッと笑われてそのままべろちゅーされた。
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