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 …俺ってば、なんて優しい人。
 違うな。あの満場一致な雰囲気に反論する気力が湧かなかったのも事実。



「むっちゃん、着替え終わった?」
「あー、うん、多分」



 扉越しに聞こえた声。
 今いるのは居間の隣にある千世の部屋。
 つまり、扉を開けたらご対面、みたいな。

 てゆか慧、なんでメイド服持ってんだ。
 最初から俺に着せる気で用意して持ってきたのか。扉の向こうでカメラ構えてんじゃないのかアイツ。



「どーぞ!」



 …しょうがない。

 覚悟を決めて、扉を開け前に踏み出す。
 長方形のテーブルを囲む、多彩な美形、青少年が俺を見てる。

 よし。




「ご奉仕するにゃん☆」



 ‐ぶはっ!


 千鳥はピクリと眉を動かし。
 翔太郎がチューハイを噴いて。
 誠が、ふぅむと頷いて。
 焔紀はニヤリと口端をあげ。
 神威がビールを噴いて。
 八雲は微笑んだまま固まって。
 社はぼうっと見てるだけ。
 慧はやっぱりカメラ構えて。
 双子は、そうきましたかと呟いて。
 棗はニーッコリ笑ってる。
 千世は口を開いて固まってる。


 そして俺は、握った両手の拳を前に垂れて猫ポーズ。
 ちょっと内股。ここポイント。



「殺傷能力高過ぎだろ」



 布巾でテーブルを拭きながら焔紀が口を開いたのをきっかけに、カメラのシャッター音が響く。
 ちょ、慧、下からのアングルはなしだろ。なし。



「まぁまぁだな」



 千鳥の価値観がわかんないよ。
 翔太郎なんて見てみな。
 顔が赤くなったりはしてないけど、内心動揺してんの丸わかりだから。



「睦月!こっちきて!」
「今にも襲い掛かりそうな犬の所は危険だから、こっちの膝の上においで」



 ごめん、誠。
 どこも危険そうなんですけど。

 とりあえず俺から見て無難な翔太郎と社の間にお邪魔することにしたら、そっこー社に抱きつかれました。
 思わず俺も抱きしめたら、周りの空気が冷たくなった気がする。なんで。



「やっぱ似合うじゃーん」
「睦月、かわいい」



 遠慮ってのを知らないのか、慧が写真を撮りまくってる。どうすんのそれ。

 なんで自分のメイド服姿を見たいのかはわからないけど、楽しんでもらえてるならいいか。
 そう思って顔を上げれば、野獣が俺を見ていた。


 


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