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まあ、楽っちゃ楽だけども。
好意を無駄にするつもりはない。
柳原さんは、清水さんと署内散策している時に出会った人だ。
暗めの茶色に、署内ではわりと長めの髪で暑いときには結べるくらい。
28歳だけど実年齢より若く見える。身長もあって、肩も広い。
ゆったりとした雰囲気と、大人な色気も感じ取れる。なんで俺の周りって美形多いんだろ。
「ついたよー」
「あ、」
気付けばゴミ置場。
ちなみにゴミ置場外にあるけど、署内から入れる便利な場所にある。
外からでも中からでも入れる感じ。
ゴミを置いて、一息。
「柳原さん、ありがとうございました」
「いーよいーよ、勝手にやっちゃってごめんね」
「いや、めちゃくちゃ助かりました」
よかった、と柳原はへらりと笑う。
女性が見たら頬を赤くしちゃうくらいの愛らしさも兼ね備えてるとか、柳原さん結構持ってるな。
手が空いて暇になるかなーなんて思いながら柳原さんと廊下を歩く。
「お、なんだ、うちに若い子いないからって口説くなよ色男」
「あ、清水さん」
廊下の曲がり角から姿を見せた清水さんは、なにかのファイルを持っていてそのファイルで肩をとんとんと叩いていた。
笑いながら柳原さんをからかってる。
ふむ、いつもこんな感じっぽいな。
「んなわけないじゃないっすか、先輩、俺に嫁いるの知ってるでしょ」
「なんだ、いなきゃすんのか?」
からからと清水が笑う。
柳原さんも笑いながらってことは、このやりとり何回かやってるな?
ていうか柳原さんて、奥さん居たんだ。
「奥さん居るんですね」
「あぁ、うん。子供もいるよ。三歳になるんだ」
「……へえ、」
ちょっとびっくり。
綺麗な人なんだろうなあ、なんて勝手に想像してみる。
「そうだ、睦月」
「はい?」
清水さんが思い出したように言って、柳原さんの奥さんの想像をしてたから声が若干上擦った。
清水さん笑ってるし。
「さっきな、睦月の仕事先から署に電話があって、明日の昼頃迎えに行くから伝えてくれって言われたんだ」
言葉と表情が合ってないよ。
なぜか苦笑してる清水さん。
明日の昼か。あんれ、ていうか、
「……誰が来るんですか?」
「いやそれがな、」
俺から目を反らして、なんだか困ったような顔。なになに、気になるんですけど。
「用件だけ言って、聞く前に切れちまったんだよ」
…なんつー自分勝手な。
ってことは電話したのは店長か?
店長以外に用件だけで切るような人、たぶんいないと思う。
しかもあの人ならやりそうだ。もしかして迎えって、店長なんじゃ…。
もんもんとする。
けど誰が迎えに来ようが、かなり目立つのは確か。なんか、嫌だ。
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