10
「んじゃ、七番!…むっちゃーん、お、い、でっ」
語尾にハートマークが付いてるようなハイテンションで、慧が言う。
ちょっと待て。名指しかよ。
番号だって、と思ってぱっと再度確認したら。
「………」
「お、い、で」
なに。
なんなのマジで。どゆこと?
割り箸に書かれた数字は、七。
慧を見れば、手招きしている。
その目はまるで獲物を見つけた蛇。俺は蛇に睨まれた蛙か。
こいつが何をするか予想が出来ないんだけど、なんでカバン持って立ってんの。
「………」
割り箸をコップに戻して立ち上がる。
「んじゃ、ちょっと移動しよっか」
「え」
にっこにこの慧に引かれ、向かうは千世の部屋。
なしてみなさん無言なの。
引かれるまま部屋に入り、慧がハイテンションで口を開いた。
「むっちゃんには、これを着て今いるメンバー全員悩殺してもらいまーす」
「ちょっとまてぇぇえぇ!!」
ガサゴソと慧がカバンから取り出したモノを、思わずひっぱたいた。
「王様は絶対なんだよ!?」
「お前この為だけに始めただろ!?」
「え、当たり前じゃん」
なに言っちゃってんのー、なんてケラケラ笑ってる慧さん。
「大丈夫大丈夫、似合うって」
ね、と渡されたその服。
慧がカバンから色んな小物を出してきて言った。
「ウィッグはいらないか。でもコレは必須だよねー」
「いやいや待て待て待て」
ん?と振り返った慧は、笑顔。
「俺にメイド服なんか似合うわけあるか!!」
「あるある」
真面目に返事すんな!
手渡されたそれは、そう、メイド服。
純粋に、服自体は可愛いんだけど。
「変に際どいコスプレよか、こっちのが良いかと」
なんて言う慧を目の前に、俺はお先真っ暗状態。酔ってんの?
ねぇ、お前酔ってんの?それともまさか俺が酔ってる?
「はい、じゃ、待ってるね!」
これ付けてね、と指差されたベッドの上。俺はどうやら開き直らなきゃいけないらしい。
部屋から慧が出て行きドアが閉まった瞬間、俺は思わず膝を付いた。
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