01
そーいやメンバーに、夕方に集合とは伝えたけど千鳥の家知ってんのかな。
そんな事思いながらもエレベーターが一階エントランスに着くのを待つ。
朝見た天気予報じゃ、今日は結構寒くなるらしい。鍋にはぴったりだよねぇ。
一階に着いてエレベーターから下りればマンションの出入口前に黒塗りの車。
確か千鳥は寒いの苦手なはず。
そりゃあ出てこないよね。
助手席側の窓をコンコン叩いてからドアを開けた。
「おはよー」
「あぁ、おはよう」
そこでふと、違和感。
「ねぇ、千世は?」
いい感じの暖かさで満たされてる車内に乗り込みながら聞いた。
そう、いつも真っ先に気付いて触れて来る愛犬の姿がない。
「置いてきた」
「え、置いて来られたの」
素直にびっくりした。
「お前、俺を誰だと思ってんだよ」
「お兄ちゃんみたいな人」
「…………」
即答したら溜息吐かれました。
なんだよなんだよ、本当の事言っただけだし。
いや、俺の答えはある意味間違いだけど。
つかマジでよく千世置いて来たよね、この人。なにしたんだろ。
動き出す車に揺られながら、ちらと千鳥を見る。
横顔が素敵だね。かっこよすぎる。
「で、どうやって置いてきたの」
「まだ言うか」
「だって気になるし」
千鳥の家行く前にスーパー寄るって話してたはずなんだけど。
人数居るから量もあるし、荷物持ちさせようとしてたのに。喜んで荷物持ちするからねあの子。
「…朝方仕事してそのまま来ただけだ」
「え?朝方?」
「4時くらいから」
「……」
そりゃ置いて来られるわけだ。
なんだ、てっきりプロレスやってきたのかと思ったのに。
何でもありのプロレスはバイト先以外でも健在だった。
目がマジだからねー。
見てると面白いよ、お兄ちゃん的な人と愛犬(大型)がプロレスしてんの。
「スーパー、寄るんだろ」
「そー、よろしく」
かなり拗ねてそうだなぁ、千世。
「…犬なんざ放置で充分なんだよ」
「あれま、声に出てた?」
「目が口ほどにモノを言ってた」
「…え、」
まじで!?つかいつ見たの!?
俺そんな目ぇしてたのか、物語っちゃってたのか。
「……元気だなお前」
「ふつーです」
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