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 ───デカイ段ボールがふたつ、目の前にある。
 お昼は食堂に連れて行ってもらって、温かくて美味しい野菜スープを飲んでからゆっくり応接室に戻ると、そいつはいた。



「…こんな少なかったか」



 ぽつりと声が出た。
 段ボールが小さいわけじゃないけど、服とか小物とか含めても、32型テレビくらいの大きさの段ボールふたつで納まるとは思わなかった。
 びっくりだ。
 とりあえず仕分けするか。


 ゆったりと間を置いて段ボールに近寄り、開ける。
 服、鞄、靴。春夏秋冬ばっらばら。
 まあそんな多くないし、無駄に多いよりはいいけれども。


 もらったビニールのごみ袋に、いらないであろう衣類を入れる。
 ふたつ目を開ければ雑貨が詰め込まれていた。いや詰め込まれてっていっても、雑じゃないけども。


 iPod、イヤホンが数本、小さいスピーカー、ファッションリングやネックレス、ピアスが入っているケース、CDなど。
 とにかく段ボールには、部屋にあった私物がほぼ詰まっていた。
 使わなくなっていたものまであったから迷わずポイだ。

 ひとつの段ボールに必要なモノ。
 もうひとつに不必要なモノを詰める。
 お気に入りの部屋着がなぜ雑貨類の中に埋まっていたのかは、流石に首を傾げたけども。



「……ふう、」



 終わったー。

 仕分けに集中してゴミをまとめ、ある程度すっきり。
 いらない物の方が多くてゴミ袋と段ボールがひとつずつ、目の前にある。

 …とりあえず捨てるか。
 まあ、物が必要になったら買えばいい。衣類とか履物とか、そのうち。

 気づけば時刻は午後3時過ぎ。
 そんなかかったのか。


 段ボールにまとまった必要な荷物を端に押しやり、廃棄予定の段ボールにごみ袋を乗せて応接室を出る。

 ゴミ置場は清水さんに教えてもらっているから、迷わず行ける、はず。

 量はあっても重さはそんなにないから、てか俺男だしそれなりに力あるけど、前を気にしつつ進んでいく。


 あー…、あとで店長にメールしないと。
 なんて考えてたら。



「あれ、どうしたの?」



 後ろから声がして振り返ると、そこにいたのは柔らかい笑顔の清水さんの部下の人、柳原さんが立っていて。
 目線は俺の抱える段ボール。



「えと、家から送ってくれた荷物を仕分けしてたんですよ」
「あ、あれか!何かと思ってたんだよあれ。……頂戴、」



 ぽん、と手を打って思い出した仕草をしてから、柳原さんは少し考え込む顔をして段ボールをひょいと持ち上げた。
 え、今の行動って天然?
 かわいいんですけど。



「え、ちょ、」
「君はこっちね、ほら問題なし」



 空いた手に渡されたのは、少ないゴミが入ったのは袋の方で。
 柳原さんはにっこり笑顔で、ゴミ置場への廊下を軽々と進んでいく。慌てて後ろについて行って柳原さんの後ろ姿を見遣る。


 


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あきゅろす。
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