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「ちょっとよく分かんなーい」
「しらばっくれんなよ」



 とりあえずボケてみたら低い声で言われた。
 それほど俺が【黒猫】だってことが泉にとって深刻な問題なのか。
 そんなに納得できる証拠がほしいのかな。おかしな話よね。



「……お前が、そうなんだろ」



 ふぅむ。



「そうやって自分の中で答えが決まっちゃってるのに聞く意味ある?」



 睨まれた。怖いね。鬼だね。狂犬だね。



「だって俺が否定したって聞く耳持たないじゃん? 返答が気に入らなかったら否定する。だったら聞かなきゃいい」



 喫驚に開く目はやっぱり少し鋭い。



「まあ決めつけられるのも不愉快だけど、…んー、そうだなぁ」



 普通の笑顔を浮かべながら、はっきり言ってやろうと口を開いた。



「───真偽を知ってどうしたいのか、ちゃんと考えてから出直して」



 迷惑だから、と続けて、まだ固まったように目を見開いてる泉に背を向けて仕込み作業を再開した。

 つか文化祭で会ったのに今さらそれ聞くとか意味わからん。
 二度目の目撃で疑惑が重なったとか?明らかに千世の態度は【黒猫】に対するやつだったしね。まあどっちにしろ俺なんですが。











『───真偽を知ってどうしたいのか、ちゃんと考えてから出直して』



 言葉が出なかった。
 そうなのか、そうじゃないのかを知る為にずっと考えていたくせに。
 言われて初めて自分がどうしたいのか曖昧なことに気がついた。


 自分はどうしたいのか。
 あいつが【黒猫】だという自信はあるが、確証はない。どうしたらいい。どうしたい?


 正直なところ自分がなぜそこまで【黒猫】にこだわるのか、はっきりした理由がない。
 昔救われた事だけ。だけどそれも理由にはなるが知った所で特に変わる事もない。例を言う?その後放置されたのに?


 いつからか目の前で作業する仕事の後輩と、記憶の中の【黒猫】が度々重なるようになった。
 声のトーン、身に纏う雰囲気、色は違うのに何故かそんな気持ちになる時がある。

 時任睦月が【黒猫】なら、自分はどうしてそれを知りたいのか。




 泉神楽はしばらくそれだけを考えようとそこから身を離し、いつの間にか時間は過ぎて鍵を開けて開店させた。


 


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あきゅろす。
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