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小、中、高が一環される、それはそれは無駄に金の掛かった外装内装の学園。
どこぞの社長の息子やら、すでに生徒本人が会社を動かしていたりと金持ちが集まる有名な私立学園。
閉鎖的な全寮制の男子学園であり、その殆どの生徒が同性愛者である。
その無駄にデカイ学習棟と更に別にある学生寮の一室、濃い青色のくせっ毛を掻きながら携帯を弄る生徒の隣でリモコン片手にテレビ番組を見漁る綺麗な濃い赤髪の同室者。
縦長の居間にプライベートルームまであり、風呂や安易キッチンまで備え付けられている学生寮は無駄に金がかかっている。
つまらなくなったのか、チャンネル切り替えをやめて視線を隣にいる青髪の恋人にやると何故か険しい顔をしていた。
「……、どったん八雲」
「……いや、」
赤毛の恋人、扇 棗(オウギ ナツメ)の声に、落合 八雲(オチアイ ヤクモ)は短い返事を返してまた黙り込んでしまった。
「───…棗、」
「ぉう?」
沈黙からたった数秒だが、八雲は棗に視線を寄越し首を傾げる棗に言った。
「神威と社を呼んで来い」
「えぇ、なんで」
「いいから」
「……ふぇーい」
嫌に真剣な眼差しで見てくる八雲に、棗は嫌々ながら隣の部屋に向かう為にソファーから立ち上がった。
二人の右隣の部屋にいる、黒崎 神威(クロサキ カムイ)と龍ヶ崎 社(リュウガサキ ヤシロ)は、八雲と棗との幼なじみでありそして恋人同士である。
四人は、今や全国トップに君臨する『tutelary』というチームの幹部メンバーであり常に共に行動する為に【四神】と纏まった通り名まである。
数分後、半ギレしている声と共に赤毛の恋人が戻って来る。
「───っんだよ八雲」
「………」
「久々に濃ゆーいラブシーン見たー」
「てめぇちょっと黙っとけ」
どうやら恋人との時間を邪魔されたらしく、神威は銀にも近い短めの白髪を掻きながら棗を睨む。
本人は慣れっこなのか、凶悪な睨みさえも気にしてはいないのだが。
「……我等が【黒猫】から、気まぐれなお誘いメールが来た」
少し落ち着いた所で、八雲は携帯を開きながら目の前に立つ三人に言った。
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