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───べっつにさー、例え確実に自分関係の事だとしても、どうにでもなっちゃうんだよ。
いや全部が全部思い通りに行っちゃったら主人公贔屓で叩かれちゃうと思うよ、まじで。
そんな超人じゃねぇもん、俺。
だって、そこらへんにいる青少年ですから。なんて。
現実逃避しちゃったりなんかして。
「っはぁあぁぁぁ……」
「んなあからさまな」
テーブルにうなだれてしまったよ。
ドリンクバーから戻ってきて、席に着いてからの千鳥の一言に俺は思わず薄ら笑いを浮かべちゃったよね。
隠す必要はないんだけど。
ちなみに席は俺が奥で千世が通路側。
「ただ見られてたっつーだけだろ、会話聞いてたわけじゃねぇんだし」
「いや、うん別に良いんだけど」
「オイ」
え、なにか?
とりあえず、俺らが駅前でご飯どうするかとか話してた所を、なんとバイト先の泉ちゃんに目撃されちゃってたんだとか。
千世が気付いてなかったのは多分俺にべったべたしてたからかと。
いや、千世は視線に気付いてた。
でも色んな視線があるあの人混みで、自分に、つうか俺に危害を加えない視線を一々意識する必要がないと本能で理解しているはず。
何も反応しなかったのは、見てただけだから。
「てか、気付いたんならその場で教えてよ」
「あ?だってお前、絶対わざとらしく近付くだろーが。……しかも何でわざわざ邪魔者増やさなきゃなんねぇんだ。すぐ終わんねぇだろアイツ」
「あはー、バレたか」
つうか絶対に本音後半でしょ。
確かにすぐには終わらないだろうねぇ。
勘繰ってたりとか色々勘付いちゃってたりしてるっぽいし。
無駄に聡いからなぁ、あそこの人達。
ま、俺だってこんな幸せをわざわざぶち壊すようなことはしないし。
近付くかどうかは。近付いてわざとらしく話しかけちゃったりすんのは、面白さを求める時だけだ。
今は幸せ噛み締めたいのさ。
「ま、いいけど」
「聞かれんじゃねぇの?」
「んー、まあ、確実にねぇ。俺は別にバレたっていいし。支障ないし、ただ面白さが少し減るだけで」
「……お前なぁ」
「うん?」
「お待たせ致しましたっ」
あ、ナイスタイミングー。
ほかほか出来立てご飯だよー。
視界の端で千鳥がため息ついてんのが見えた気がした。気のせいにしておこう。うん。
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