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 ───…。



「……っし、良いよー」



 ぱちりと目を開けて、墓石を見て。
 横を見たらばっちり千世と目があって、笑って千世に次を促す。

 同じように水をかけて、しっかり俺を見てたらしく目を閉じて数十秒。
 目を開けて墓石を見つめる千世。
 その真面目な表情は、横にいる俺の傍にひっついた瞬間崩れ去った。

 もっと見たかったのにー。


 最後に千鳥がお参りして、終了ー。



「ちゃんと挨拶した?」
「うん、した」
「なんて?」
「睦月の犬ですって」
「……」



 可愛いやつめ。
 俺も同じように紹介しといたよ。
 わしゃわしゃ髪を撫で回して、嬉しそうに笑う千世がまた可愛くて。親バカかな。



「終わったぞ」
「ういー」



 桶を持ってる千鳥が歩き出してく。
 片付けてくれるらしい。千世と手を繋いで、ちらと墓石を見て。

 頭ん中で、また来るよ、なんて言ってみちゃったりして。



「お腹すいたー」
「たー」



 墓地を出て駅までのんびり三人で歩きながらぼやいてみる。



「あっち着いたらどっかで食うか」
「さーんせーい!」
「せーい!」



 オニイサマ、おうむ返しな千世が可愛いんだけど!
 そんな意味を込めて千鳥を見つめてみたら、なんか呆れ顔された。
 分かったのか。
 考えてること分かっちゃったのか。

 繋いだ手をふらふらさせながら、来た道をざっくざく。


 あー。
 やっぱ、戻るべきかな。
 落ち着きすぎてやばい。
 安心してる。幸せだと感じる。
 年明け前までには話しようかな。
 蓮さんは多分、薄々気付いてそう。
 変に聡いし、あの人。



「なんか久々に肉が食べたい」
「珍しいな」
「にくにくー」
「いや、なんかわかんないけど肉な気分。でも鶏肉ね」
「だろーな」
「とりにくーぶたにくーぎゅーにくー」
「………」
「………」



 かなり千世がハイテンションな気がする。幸せそうだなオイ。

 ため息を吐く千鳥に、ハイテンションな千世。
 その間にいる俺。
 なんだこれ。なんか懐かしいな。
 こういう感じが懐かしく思える。

 幸せな懐かしさってやつか。



 


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