08
「遅かったな」
「……えー」
森を歩く事数十分。
無事にたどり着いた墓地には、なんと千鳥が立ってました。
腕組んで壁に寄り掛かるその姿がキラッキラしてるのは、多分いや確実に幻覚だ。
「早かったね」
「終わらせたから」
「……」
どんだけ仕事出来るんだコイツ。
まあいいや。
母さんの墓があるこの墓地は、そんなに広くない。
入っても30くらいじゃないかな。間隔が狭いから、結構窮屈。
水道のある場所には桶もある。
中に水入れて、千世に花を覆っていたビニールを外させて。
俺ら以外、多分誰もいない。
てゆか母さんに関係あんの俺だけじゃん。いつだか千鳥と行った時もそうだったけど、まあ、俺が大切だと思っている人を連れて来るのは良いだろう。
千鳥が、前来た時に供えた花を捨てて瓶を洗ってくれる。
汚れすごそうだ。
「千世、おいで」
「わん!」
俺に呼ばれんのが大好きとみた。
笑顔が凄いよ。花が見えるよ。
千世と一緒に、墓石の前に立つ。
変わらない姿で冷たい。当たり前だけど。なんつーか、気持ち的なアレ。
温かくてもびっくりすっけどさ。
「俺の母さんが眠ってるんだよ」
「ねむってる?」
「死んだ人は、灰になってここに入る」
「………ふうん」
「俺もいつか入るんだよ」
墓石をじっと見てる千世を見れば、視線に気付いた千世が俺を見る。
「オレも、入る?」
無表情だけど、その目は何故か寂しそうで。
「……そうだね、一緒に入れてもらおうか」
「わんっ!」
きっとお前は俺より長生きするんだろう。
身体的な構造上、そうなると思ってる。けど千世は俺が死んだら死ぬ。
千世の生命力は俺だから。
俺がいなくなったら、千世は死んじゃう。二年以上はきっとダメ。
食事も最低限の運動も、それは千世の体を造る基礎でしかない。自分を満たす感情がないと千世は弱り続けていずれは死ぬから。
自分勝手に拾っといて、自分勝手に殺すつもりはなかったから俺はお前に会いに行くつもりだったんだよ。
だから姿を消しても千鳥と連絡取ってたんだし。
全ては愛せないけど、何よりも俺はきっとお前に依存しているんだ。
俺以上に千世は俺に依存してるんだけど。
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