07 乗り換え二回。 電車に揺られる事1時間弱。 駅からは徒歩で十分くらいだったはず。 何年も行かないと忘れるってまじで。 特に。 「こう、森ばっかだとねー」 「?」 千世が過去に一度でも来ていれば、何年振りだろうが確実に辿り着けるんだけど。 それくらい記憶力というか方向感覚というか色々優れすぎてるわけで。 仕方ない。余裕はある。 「のんびり行きますかー」 「わん」 ……いや、うん大丈夫。 人はいない。 つうかこんなとこ来るって墓参りくらいしかないと思う、ってくらい何もない場所。 都心近くから電車1時間でこんなとこあるなんて、行かなきゃわかんないって。 母さんの実家が近いわけじゃない。 ただ母さんは、自然が大好きなだけ。そう考えると父親は母さんを愛していたんだって思える。 愛してないわけじゃない。愛がなかったのは、俺に対してだけだ。 「むつき?」 「……うん?、あ、なんでもないよ」 しんみりしちゃったりして。 駅前の花屋で花を買って、近くのスーパーみたいな所で線香を買って。 花は千世に持たせました。 仏花なのに、誰かにプレゼントしに行くみたいだ。プレゼントってか捧げる。 間違っちゃいないんだけど。 「道に迷ったらどうしよう」 「だいじょうぶ!オレがいるから!」 ううん。 迷ってまた始めから、なんてヤなんだけどなー。 そうそう文句なんか言ってられん。 現地集合って言った千鳥は過去に一度、墓参りに来てくれているから多分分かる。 記憶力良すぎだって。そんなスキル俺にはありません! うろ覚えで道を行く。 人が通る所は道が作ってあるし、途中までは分かる。 最後まで作れって話だよねー。 「やっぱこーいう所は肌寒いね」 「そう?」 お前は別。俺は肌寒いの。 服装選択に間違いはないんだけど。 長居するつもりはないし、理由もない。 ざっくざくと枯れ葉が音を立てて。 嫌いじゃない、こんな場所が落ち着くのは木が沢山あるからだ。 足場は悪くないし、ただ暗くなったら歩きづらいだけで。 常夜灯ほとんどないし。五メートルくらいの感覚じゃね?多分。 [*][#] [戻る] |