05
「……んぅぅぅ、う゛」
息苦しさでぱちりと目を開く。
部屋は薄暗いけど、もう朝だ。
背中の温もりに、さっきの息苦しさを思い出して首を動かした。
「………」
「………ぐう」
犬が凄く綺麗な顔で寝ている。
気持ち良さそうに寝ている。
なんかムカつく。
言わずもがな此処は千世の部屋。
殺風景で、必要なものしかない部屋。
千鳥はもう仕事行ったんだろう。
携帯を開いて時間を確かめたら、午前9時ぴったんこ。ぴったりだと若干、おっ、てなる。
テンションが上がるわけじゃないんだけども。
「……起きるか」
何となくそのまま寝かしておくのも嫌だから千世も起こして、リビングへ。
まだ眠いのか背中に覆いかぶさってダラけてる。言葉通りに引きずって歩く。
「ん、」
リビングに入ったら、テーブルに紙が。
見れば、仕事終わりに直接現地に向かうから先に行くように。到着予定時間は14時過ぎ辺り。とメモが。
ちなみにご飯の用意もしてくれてるらしく、冷蔵庫に入ってるから食いたくなったら食え、とのこと。
もちろん食うよねー。
現地はこっから電車で1時間ちょいの、だいぶ木々が増える田舎っぽいとこ。
近場でああいう場所があんのも、ちょっとした息抜きには丁度良いと思います。
12時半には出れば余裕がある。
ゆっくりまったり行きますかね。
暑いわけでも寒すぎるわけでもない。
雨予報はなし。日が出てるし、いいカンジだ。
「ハイ、顔洗おうねー」
「わふ」
あくびしながら返事すんな。
可愛いから許す。
犬に甘いって昨日千鳥に言われたばっかなんだけど。
いやだいぶ前から言われてますけど。躾は行き届いてますから、ちょっとくらいはねぇ。
顔洗って、一息。
朝ごはん何かなー。
ふんふん鼻歌なんか歌っちゃって、冷蔵庫を開けたらあらびっくり。
千鳥はつくづく俺の気分を分かっちゃってる気がするんだ。
気分って言えないんじゃないかってくらい。
食欲はあんまりないのを分かっててフルーツたっぷりのヨーグルトなんて、時々千鳥は超能力でもあるんじゃないかって思うんだ。
え、ちょー嬉しいに決まってんじゃん。
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